#ac2_total# 小説2 | ナノ

 

君を好きになったなんて言えないまま。



『耳障りな優しいことば』



胸がえぐられる感覚を実感したことがあるだろうか。
例えて言うならメロンをスプーンでグリッとすくう、それをされてる感覚に近い。
陳腐な比喩だけど、こんなにもリアルにそれを体感してるのは私くらいだと思ったりする。

今日も柳の視線は私の胸を、それはそれはゴッソリとえぐった。
長いまつげで綺麗に縁取られた瞳から突き出したスプーン。それは私の胸の一番淀んだ部分をすくおうとするから。
私は今日も自分の爪先に視線をそらして、逃げる。

「……ん…」

ひょっとしたら私より綺麗なその髪が首元をかすめて、鎖骨のあたりにチクっと痛みが走った。駄目だそんなとこ、絶対見える。


「やっ、ちょっ、…駄目だって」
「お前が目をそらすからだろう」

ううん駄目なんかじゃない。見られて困る人なんか別にいないよ。
西陽が校舎を斜めに染め上げる放課後、廊下の端にある進路指導室で私たちはたまにこんなことする。


「…あっ」
「ふ……好きだな、お前も」

シンプルな部屋の隅で壁に押しやられて、その骨ばった手が私の制服の中を這う。
下着越しに乳首をこりこり刺激されて、生ぬるい声が出た。

柳はこういうとき意外に優しくない。
ほら、これ見よがしに二人掛けのソファが私たちを待ってるのに、こうやって石膏ボードの壁に押し付けるでしょ。けど、そんなところがいい。


「あ、はあ……、ん、んっ」

気づいたら下着は外されて、上半身の素肌が柳のブレザーに触れてチクチクくすぐったい。
だけど中心を舐められたら、そんなの気にする余裕がなくなった。

そつなく舐め上げられて、あっという間に欲しくなる。
駄目なんだよなあ。こういうの、すぐ濡れちゃうんだよ。

静かな進路指導室に水音が響いて、ああ絶対わざと音立ててるな。
そう思って私もちょっと大袈裟に甘い声を出してやった。
そしたらこっちを見上げてくるもんだから、キスでもしてくれるのかと思ったら乱雑にパンツ脱がされて、ほらやっぱ優しくない。
でも、それでいい。それがいい。


「グショグショだ」

柳が脱がしたパンツの内側にくっきりついた跡を見て、まるで理科の実験中みたいに冷静なトーンで言う。
いつも挿れた時は少し余裕なさそうに熱っぽい表情すること、知ってるんだからね。


だけどいきなりその長い指で激しくかき回してきたから、さっきとは違って素でやらしい声が出た。


「あっ、あっああ、いきなりっ…んっ」
「こうされたいんだろう?」

もうさあ、抑えつけられてこんなこと言われて、マゾヒズムが沸かない女の子なんているんですか。
意に即してそこがグチャグチャに濡れる。自分で分かるの。

「やっ、ああ、ん…そんなしちゃっ、あっ」
「そう言われるとしたくなるな」
「んんっ、やっ、だめっ…ああっ」
「…少し抑えろ。外に漏れる」


中指か人差し指か分かんないけど奥でクルクル円描かれて、クリトリスをグリグリこね回される。
うわあなんか今日激しい。いつも楽しそうに焦らしたりしてくるくせに、こんなに早くイけちゃいそう。もう脚ガクガクしてきて太もものあたりから浮遊感。

少しの痛みさえ伴った強すぎる快感のせいで、額のあたりで閃光がパチパチしてきた。


「ね、すぐイっちゃいそっ…ああ、ん」

そう言って柳の首に腕を回したら、無表情でズボンを下ろして熱いの宛がってきて。
思わずギュッと抱き着いて顔近づけた。
横目に見たらいかにも煩わしそうな表情するくせに、その手は私の頭を丁寧に撫でるんだから矛盾してる。



片脚を高く上げられた途端、押し入ってくる熱くて硬いそれに脚が震えた。

……寂しさは積もる。胸の奥の深くにしんしん積もる。
柳の凛とした瞳は、私のその寂しさをいちいちえぐる。カチャカチャ金属音立ててえぐってきて、涙が出そうになるのだ。


「あっ、やあっ、ん…あ、あああっ」
「……はっ」

柳のは大きくて、突き上げられる度に奥が収縮するから背中まで痺れそうになる。
乳首攻められるのも信じられないくらい気持ちいいんだけど、やっぱりこれが一番だ。

ラブラブなセックスなんて要らない。
こうやってガンガン突かれて、めちゃめちゃになりたい。

柳が突きながらクリトリス押しつぶしてきて、危うく大声出して喘ぎそうになった。
やだ、駄目だって、そんなにしたら、ああもう訳わかんない気持ちいい。

それでギュッと締め付けたら、いよいよ摩擦でも起こすんじゃないかってくらい激しく動き始めた。





「……はあっ…名前、平気か」


だけどふいに気遣うようにそんなこと言ってくるところが本気で嫌いだ。

柳はこういうとき意外に優しくなくって。
それが、よかったのに。
こんな絶妙なタイミングで優しくなんてしないでほしい。
痛くないですかなんて毎回毎回優しく聞いてきた比呂士を思い出した。

鋭さの中にホントは少しだけ優しさを秘めてるその視線。どこか似て見えて、丁寧に押し込めた過去をすくいあげられるようで辛い。




また恋をするのはいけないことか?



俺を好きになってはくれないのか、なんてしおらしくキスしてきた柳を、離したくないと思うのはいけないことだろうか。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -