無知純情




冬の淡い空気の中、白い夜叉のようだな、と小さく息を切らしながら漏らされた言葉がゆっくりと脳に滲みるのがわかった


数時間前、銀時は不意に目がさ覚め目線だけを時計にむけた、時刻は25時を廻ったところだ

一度目が覚めてはなかなか眠りにつくことが出来ない銀時はゆっくりと起き上がり立ち上がった畳は想像以上に寝起きで火照た身体には冷たく足元に視線を落としたまま軽く眉間に皺を寄せた。

そこでふと、右足に罹る不思議な形の影にそこで初めて庄子越しに人影があることに気づかされ反射的に目をやると、廊下に座りこむ見慣れ過ぎた歳と性別が分からなくなるような小柄な影は月明かりのせいもありより鮮明に映し出された。

影主は自分に感じる視線に気づいたのか「お前もこっちに来たらどうだァ…銀時」と少し掠れた声を上げた

銀時はその声に誘われるかのように庄子を引くと目の前に飛び込んできたのは冷たく無機質な恐怖すら感じられる兎が住んでいるなど微塵も思えない満月だった、影の主である高杉に声をかけようと開いたはずの唇からは音を出すことが出来ずただ口を開いたままの姿を高杉に阿保面だと笑われようやく締めることが出来き、そっとその横に腰を降ろすと月を下から見上げるようなかたちになりそれは銀時にあの日を思い出させた。


あれは一年前の冬、
小さなこの村塾に響く悲鳴、部屋の隅で転がる人形のように倒れている松陽先生、冷たい畳を濡らす止まることを知らない先生の赤いそれ、返り血に染まる無力でな銀時を乱雑に開けられた庄子から覗く満月が嘲笑い責め立てた


あの日から高杉は自ら他者に触れることをしなくなった、
指先が赤くなっているその手に触れるとそれは冬の空気と同化して消えてしまいそうだ、と思った、また月をみるその淡い横顔も同様、自分の胸元に冷たいものを感じ無意識に高杉を抱きしめていたことに気づくのが遅れる、その体温は離したら消えてしまいそうで口元にあった耳に「シよう、高杉」と囁くと軽く目を見開いたが高杉は返事の代わりに小さく喉で笑うと銀時に連れられ流れるように部屋に入り抱き合うとそっと高杉の自身を取り出し自分のそれと擦り合わせた、動かす指に比例し高杉は小さく声を漏らし身体は次第に熱を持ちはじめた

実際銀時はそんな気分ではなかったが今はこれで繋ぎとめておくことしか、快楽(これ)でしか高杉をこの世界から遠ざけてやる方法を知らなかったのだ。

「ぅあ銀、時…ッあ!」
銀時の背中に縋るような高杉の指が絡み付き限界を伝えるかのように何度も銀時の名前を呼んだ。


そして今に至る。それに付け足すように高杉は人を抱いてる時の面には見えねェな、と挑発的な口調で切なげに笑ってみせた
その言葉が脳に溶け込んだことを確認するとそっと自分が夜叉ならば高杉は泡のようだと返した、少し目を離せば溶けてしまいそうで、冷たい身体は触れていないと熱を、生きていると感じられない、否、いっそこのまま熱に、冬に解けて逝ってしまえばいいのに、と音になるのを抑え込み唇を噛み締めた。

広すぎる世界、小さな身体はこうでもしないと溶け込めなく、まだセックスのやり方も分からずに自慰に限りなく近い純粋なそれに限界を求め指を動かすまだ世界の広さも、目の前でゆっくりと消えてゆくものにも気付けなかった14歳、最後の冬。



(逃げたい臆病者は、きっと)


End


----------------------------ツイッターのほうでお世話になっているさくらひかる様から素敵な現代の銀時ではない銀時×高杉というお題でリクエストを頂きました!//ひいぃ大変遅くなり申し訳ありません´`;そしてなんだかお題に全然そってない上によくわからない話になってしまい申し訳ありませんでした;;リクエストありがとうございました!//こんな奴ですがこれからも宜しくお願いいたします!←