護向日葵(相互記念)向日葵の花言葉、知ってるか? 夜明けも近い空を迎えた部屋で語るように呟かれたそれにゆっくり身を預けた 空が泣き出した戦場、普段ならどんな血に塗れようと星が広がる時間帯の筈だった、夏も終わろうとしている時期の雨はじっとりと降り消される筈の死体独特の臭いが鼻をついて離れない。 仲間の安否を確認するため後ろを振り返ると天人に切り掛かる銀時の姿があった、返り血を浴び、朱い瞳が暗闇にはっきりと光り揺れていた。 刀を持った銀時の姿は仲間であっても鳥肌が立つ程恐ろしいものだ、この雨のせいで不覚にも銀時の頭に蘇るのは幼少の頃他人に怯え己を護る為だけに誰の物とも知らない刀で死人を積み上げ返り血を浴び自分に感情があることすら解らなくなっていたことだとは知る予知もなく高杉にはどこと無く狂気にも似たものを身体に纏い剣を振るっている様に見えた。 ふと、高杉はその姿に頭の端でこいつは何を想い、見て戦っているのだろうかと考える、(考えたところで分かるはずもないが)今日のところは、とでも言うかの様に大将らしき人物が何やら声を張り上げる、するとそれに従うかのように天人は生温い雨の中へと姿を消した。 それを確認すると坂本がお得意の笑顔を高杉に向け肩を組むと腹が減っているせいか戦中、臨時で住んでいる家へと足を急がせた。 簡単な夕食を取り、風呂に入ると高杉は先に自室に戻った銀時の部屋へと向かった、庄子に手をかけゆっくりと引くと明らかに違う空気に身が包まれるのが分かった、明かり一つ付けない部屋に朱い瞳が鋭く光り浮いていた。 高杉は足を引きずる様に引き寄せられるかの様に中に入ると銀時にそっと抱き寄せられ乱暴に布団の上に押し倒し着流しを乱暴にむしり取られた。その姿を見てふと、戦場で見た先程の姿が鮮明に思い出され面影が重なった、(戦う時と同じ瞳で自分を抱く) 銀時が高杉の首筋を這う様に舐め上げ手加減等せずにそこに噛み付くと嗚咽混じりの声が漏れた。銀時と身体を重ねたのはこれが初めてではなかった。 銀時は決して優しく抱いたりなどしない、息をする暇すら与ず荒々しく高杉を毎晩の様に抱いた。雨夜は特に激しく決して離さないと檻のように縛るように荒々しく、白夜叉の意味を身体に刻み込まれる。「ん…あぁッ…!」悲鳴にも似た高杉の声と水音が部屋中に響きわたりそれは銀時を更に煽った「はっ…高杉、高杉…ッ」 その何度も自分の名を呼ぶ声と同時に腹に感じた熱を最後に高杉は意識を手放した庄子越しに朝日が嫌でも目覚めろと顔を照らしけだるい身体を嫌々起こすと背中に鋭い痛みを感じ正面にあった鏡でそれを確認する、 確かに布団の上で行為を行った筈なのに背中が擦り傷だらけ、慌てて布団に目をやれば微かに血が付いていたいう事に気づき改めて昨夜の激しさを思い知った。 横に目を向ければ昨晩あれ程荒々しく自分を抱いたとは思えない子供の様な顔をして眠る銀時に起きろ。と身体を軽く揺らしながら呟き、立ち上がるとまだ少し痛む背中を血生臭い服に身を包み一足先に戦場へと向かった。 それから数ヶ月後、侍はあの日と同じ雨に身体を打たれながら敗戦というかたちで攘夷戦争は呆気なく幕を閉じた。 その夜明けも近い時間帯に何時もと変わり無く銀時の部屋に入る、そこには月明かりに照らされるなんとも形容できない表情をした銀時の姿があった。高杉は音を立てずに銀時の隣に腰を降ろす、湿気のせいか畳が少し湿っぽい。 銀時に軽く視線を移せば隊服のままだということに気づく、定まらない視線でそれを見つめていると不意に銀時が小さく口を動かした、目線は庭の向日葵に向けられたままだ。 銀時はもう一度高杉の返事を要求するかのように向日葵の花言葉って知ってるかと呟いた、高杉はそのゆったりとした口調に飲み込まれそうになるのを拒まずに「ずっと貴方を想い続けます…だろ?」当たり前だとでもいうかの様な口調で言ってみせると子供の様な無邪気で淡い(何処か揺れる様な)笑顔を向けられ「想うって護るでもいいよな」俺向日葵でお前を護るよそう言いながらもう一度微笑んだ、だがそれは数秒と持たず高杉の光を閉ざした片目を髪の間から指を入れ切なげにゆっくりと撫で上げた(それは幾度も悔やむように)その手に自分の手を重ねるとそれは微かに震えていた。 優しく、赤子を宥める様に話す「片目なんかなくてもかまいやしねェよ」向日葵が見れるならそう銀時の頬に滑らせる様に触れながら付け足した、言い終わると同時に強く抱きしめられる、それは痛い程に。まだ微かに震える肩と伝わる体温に何処と無くこれが最後になるかも知れないと思った、(怖いんだ、失うことが俺もコイツも)外に目を向けると先程銀時が見ていた雨と暗闇にぼやける向日葵が目に入る、それは今の心情には似合わぬ程堂々と胸を張り、いつ止まぬかと待つ様に雨空を見上げていた。(その姿は何処か寂し気で銀時に重なる)太陽が当たれば笑顔を振り撒き、雨が振れば空が代わりに泣いてくれたというように見上げる、その姿がどうしても重なり縋る様に銀時の背中に腕を回した。 言葉は交わさずとも最後だと告げる情事を行った、銀時は初めて人を優しく抱いた。 銀時は隣で眠る高杉にそっとキスを落とし枕元にある血に塗れた布を額に巻くと、部屋を息を切らしながら飛び出し走り出した、護れない自身の弱さから逃げ白夜叉という名を戦友を高杉を捨て逃げた夜 。まだ肌に微かに残る愛しき香り、今だ捨てられない気持ちを胸に何時か見た向日葵畑に身体をなだれ込ませどこか遠くで自分の名を呼ぶ懐かしく愛しい声に身を委ね月だけが見守るなかそのまま浅い眠りに落ちた。 (護れなくてごめんな) (泣き出したのは空ではなくお前だった) End ----------------------------みね様大変遅くなり申し訳ございませんでした、みねさまには向日葵と夜叉督という素敵なテーマをいただきました// なんだか何時にも増して分かり辛い文章で申し訳ありません…;相互ありがとうございましたこれからも管理人共々よろしくお願いいたします// |