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迷いながら進んで行けば、港に辿り着く。船はすでに到着しているようで人も多くざわざわしていた。少しずつ近づけば、船員であろう一人がこちらに気付いたようで遠くから叫んでいる。遠くてあまり聞き取れないが、近づかないと怪しまれてしまう。仕方なく駆け足で近付いた。
『早くこっちを手伝いに来い。』
トメニア語で叫んでいる船員はこちらをただの業者と思い込んでいるらしい。あまりトメニア語を聞き取れる人がいないようで意思疎通がはかれていないようだ。
『はい、どうしたらいいんですか。』
天照の言葉を相手が理解できるかわからないのでトメニア語で話しかける。
『なんだ、トメニア語で話せるのか。都合がいい。早く積荷を降ろしてくれ。あまり滞在したくないんだ。』
それを聞き、周りに先にすべて降ろすように声をかける。降ろしたものから運ばせるより先にすべて降ろすほうがこちらとしては都合が良い。積荷が集まっている方がやりやすい。まわりもこちらの正体には触れず積荷を降ろし始める。
『助かったよ、嬢ちゃん。こいつら全然聞き取れてなかったみたいだったからな。』
先程の船員が話しかけてきた。気の良さそうな男で密輸船に関係してるとは思えない風体だった。
『いえ。あ、あのトメニアの方ですよね。今のトメニアってどんな感じなんですか?』
いつ正体が知られるかわからないので一つ目の目標を達成しておこうと話しかける。密輸船に関係するぐらいならきっとトメニアのことは十分にくわしいだろう。
『嬢ちゃんはトメニアからこっちでてきたのか?そうだな。』
人の良さそうな船員が説明しようとき、多くの人が港に流れ込んできた。
「おい、何をしている荷物を運べ。敵が侵入してきているんだ。」
やってきた一人が大声で怒鳴りつける。港は張り詰めた空気につつまれる。荷物を降ろしている者たちもあたふたと動く。
「そこの赤毛の女は誰だ。そんな業者はいないはずだが。」
怒鳴っていた男に目をつけられる。もうかくしきれないだろう。
『船員さん、もし次会うことがあったらトメニアのこと詳しく教えてください。』
そういってエスチュアリーは敵に近付いていきながら異能で怒鳴った男を穴に落とす。かぶっていた帽子がぼとりと地面に落ちる。
「トメニアのこと知りたかったのに。」
こちらを敵として認識した研究者たちが一斉に近付いてくるなか、彼女はぽそりと呟いた。
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かなりパラレル