銀魂 | ナノ


「抹茶ティラミスと抹茶チーズケーキと抹茶アイススペシャル…」

「抹茶、好きなの?」


山崎さんは緑色の物体で溢れ返る私のお盆を見て苦笑しながら聞いてきた。

「最近のマイブームです!苦みと甘さのハーモニーがたまらないんですよ」

「そうなんだ…俺も同じのにしようかな。さすがにそんな沢山は食えないけど」

今日はカップルサービスデーでケーキバイキングが割引になるため、多くのカップルが店に来ていた。
目の色変えてケーキを選ぶ彼女たちに彼氏の方は若干引き気味である。
しかし「サービス」「割引」の言葉の魔力にとりつかれた女たちは、今日ばかりは太るのを気にしていられないのだった。

(以上、美鈴の独断と偏見による実況中継でした。)


「ところでさ、これからどうする?」

「どうって?」

「見回りだよ。どこ行く?」

ああ、そういえば私たちおとり役だっけ。
抹茶パラダイスを前にして当初の目的を一瞬忘れていた。

「さっき連絡があって、局長たちはそれぞれ別の場所を巡回してるってさ」

「まじですか」

監視してるとか言ってたくせに結局放置か!

「日も暮れてきたし、そろそろ犯人も動き出すんじゃないかな」

「うーん…狙われているのはカップルなんですから、そういう人たちが集まる所に行くべきですよね」

「カップルが行く所…」

『……』

**********


夜の繁華街は昼間の商店街とさほど変わらないくらい人が多い。
私たちはとりあえず怪しい人物がいないかと、さりげなく観察しながら歩いていた。

「ちょっとそこの美人さん!うちの店で働かない?」
「いっしょに酒飲もうぜ」

などという声はまるっきり無視して通り過ぎる。

しばらく歩いていると、突然山崎さんが真剣な顔で隣の私を見た。

「美鈴ちゃん」

「はい?」

「…もっと人けのない所に行こう」

「……へ?」


見つめ合うこと数十秒、
私の呆けた返事の意味にはっと気づいた山崎さんは慌ててつけ加えた。

「いやあの変な意味じゃなくて!ほら、目撃者がいないってことは人が少ない所での犯行ってことだから…」

「あ、そうですよね」

「うん…」


気まずい空気が流れる中、私たちが路地裏に入った、その時

「きゃあああああ!!」

「!!」

奥の方から女の人の悲鳴が聞こえた。
急いで駆けつけると、私たちに気づいた黒い人影が慌てて逃げていく。

「俺が追うから、美鈴ちゃんは女の人を!」

「わかりました!」

そう言って山崎さんは犯人を追いかけていった。

「大丈夫ですか?」

「ええ…」

尻餅をついてはいるものの、女性は無事なようだ。
しかし…

「彼が…私をかばって…!」

泣き崩れる女の人の後ろに、血まみれで動かなくなった男性が横たわっていた。
見開かれた眼はにごり、もはや何も写していない。

もう手遅れだ…

そう分かってはいたけれど、とにかく助けを呼ぼうと私は携帯電話を出した。


後ろに、気配

「!!」

背後からの攻撃をよけ、刀を取り出す。
相手は私の反応に驚いたらしく間合いを取った。

「…真選組の女中、斎藤美鈴だな?」

「そうですけど」

「おとなしく我々に捕まってもらうぞ!」

「はあ…」

さっきの通り魔とは明らかに別格の男が3人、私を取り囲んでいる。
しかも私の名前を知っているということは…

(攘夷志士…か)

私の後ろには座り込んでいる女性、目の前にはやり手の浪士。
おまけに先ほどの攻撃が右足にかすっていて、地味に痛い。

…ちょっと、ピンチかもしれない…


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