短編 | ナノ


「クラピカは、紅茶とコーヒーどっちが好き?」
「…紅茶、かな」

とある喫茶店の窓際の席。
めずらしくお互いの休日が重なった私達は、向かい合わせに座って一緒にお茶を飲んでいた。

「名無しさんは?」
「私も紅茶かなー。コーヒーは砂糖とミルクいっぱい入れないと飲めないし…」
「私は逆だ。コーヒーはブラックしか飲まない」
「え!苦いのに?」
「苦いものを無理やり甘くしたような味は好きじゃないんだ」
「へー…じゃあチョコレートとかもダメ?」
「…ああ」

とりとめのないことを話しながら、穏やかな午後は過ぎてゆく。
最近の出来事や仕事のこと、ゴン達はどうしているだろうとか、他にもいろいろ喋って、笑い合ったりした。

クラピカとこうして話をするのは楽しい。今日みたいにゆっくり会うのは久しぶりだから、なおさらだ。

ハンター試験の時に知り合ってから何年も経ったけれど、ずっと仲間でいられるなんてすごく嬉しいことだと思う。

クラピカは優雅にダージリンを飲みながら、私の話に耳を傾けている。
ちょっとした動作なのに上品さが感じられるから不思議だ。


「…それでね、その同僚がすごく綺麗な金髪で美人なの。クラピカみたいだよね」
「私は綺麗でも美人でもないんだが…」
「何言ってるの、綺麗だよ!いいなぁ、金糸みたいにさらさらの髪で…」
「…名無しさんの髪の方が綺麗だろう」
「またまたー。私の髪なんて平凡な茶色だよ?」

苦笑した私の顔を、クラピカは何も言わずにじっと見ている。

なんだか値踏みされてるような気がして緊張していると、クラピカがぽつりと言った。

「光に透けると…紅茶みたいな色だな」
「…え?」

クラピカは静かにカップを持ちあげ、飲みかけの紅茶に口をつける。




「紅茶が好きな理由を、教えようか?」





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