Ocean blue | ナノ
再出発  01
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「どうした?」

眉を寄せて青いスカーフを凝視するクラピカに、レオリオが尋ねる。

「それ、セルシアが拾ったやつじゃねーか?弟が身に付けてたっていう…」

「そうだろうな。…ここを見てみろ」

クラピカはスカーフに描かれている小さな紋章を指さした。Rの飾り文字に蔦と蛇が絡みついている。

「…なんのマークだ?ブランドか?」

「詳しくは分からないが見覚えがある。私の記憶が正しければ…どこかの財閥の印だったか…?とにかく、何かの手がかりになるかもしれない」

「なんかありそうだな。めくってみようぜ」

レオリオが言った「めくる」とは、電脳ページで情報を調べることを指す。

クラピカとレオリオは先ほどの執事に頼んでパソコンを借り、さっそく電脳ページを開いた。


「…あった。この紋章だ」

しばらくして、目的のページを探り当てたクラピカがそこに書かれている情報を読み上げる。

「ランス財閥。ヨルビアン大陸最大の財閥のひとつで、金融、貿易、鉱山開発などの事業を展開している。そして…裏ではマフィアと深い繋がりがあり、悪い噂が絶えない組織だ。武器の密輸、麻薬取引、etc…」

「人身売買ってのもあるぜ」

「あくまで噂のようだが、これだけの事柄が電脳ページに載っているということは…信憑性は高いな。現在の会長はランス・ドークマン氏。この写真に写っている…」

そこで、クラピカは言葉を途切らせた。

写真に写っているのは高級そうなスーツを着ている老人。金の指輪などの派手な装飾品を身につけていて、いかにも「偉そう」な人物だ。そして、その男をとり囲んでいる黒スーツの集団。ほとんどはがっしりした体格の大人で、一目でボディーガードだと分かるのだが…

その中に一人だけ、背が低く細身の人間がいる。その少年は、今クラピカが持っている青いスカーフをつけていた。


**********


「失礼します」

ついさっき目を覚まし、ベッドで横になっていたセルシアは、ひかえめなノックの音と声を聞きとって身体を起こした。

「すみません。起してしまって…」

「いえ、起きてたから気にしないで……あ!あなたは…」

「カナリアです。昼食を持ってきました」

手に持っていた食器をベッドの脇のテーブルに置き、カナリアはセルシアを真っ直ぐに見つめた。

「ありがとうございます。カナリアさん、頭の怪我は大丈夫ですか…?というか、あれからいろいろと大丈夫でしたか?」

心配そうに問うセルシアに、カナリアは目を丸くしてから少し微笑んで答えた。

「問題ありません。セルシアさんこそ、傷の具合はどうですか?」

「私は平気です。傷口も塞がってきてるし…まだちょっと、いやかなり痛いですけど」

はは…と乾いた笑みを浮かべるセルシア。カナリアはそれを見て、耐えきれずにぷっと吹き出した。


それから2人は少し打ち解けて話をした。性格が似ていたからか、馬が合ったらしい。お互い今まで同年代の少女と会う機会が少なかったため、こうして楽しくお喋りをして過ごすのは新鮮だった。

「キルア様が言っていました。あなたはすごく心配性で、自分のことは二の次にする救えない奴だって」

「…それって悪口?」

「誉め言葉よ。あの方なりの」

カナリアはキルアの名前を出すたびに、優しい目をしていた。そして、ふいに真面目な顔になる。

「キルア様は、あなた達を本当に信頼してる。だから、こんなことを言うのは差し出がましいかもしれないけど…キルア様を、よろしくお願いします」

「うん。キルアは、私たちの大切な仲間だからね」

セルシアも真剣な顔で深く頷いた。カナリアは安心したように息をついて、ふとテーブルの上にある手つかずの料理に気づく。

「昼食、食べないの?」

「あ、…うーん。あんまり食欲はないかな…」

「でも、もう3日も食べてないでしょ?栄養摂らないと」

セルシアは困ったように、どこか憂鬱そうに微笑んだ。カナリアがその原因に思い至り、大事な用件を思い出したその時、部屋の扉が勢いよく開かれた。

「セルシア!!起きてるか!?」

「レオリオ…ノックくらいしろ」

興奮した様子のレオリオと、クラピカが入って来る。

カナリアは驚いて椅子から腰を浮かせ、セルシアは瞬きをして2人を見た。

「騒がしくしてすまない。セルシア、具合はどうだ?」

「うん、だいぶ良くなったよ。それより…どうしたの?」

「見てもらいたいものがあるんだ。一緒に来てくれるか?」


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