Ocean blue | ナノ
ゾルディック家A   01
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「ゼブロさん、長い間本当にありがとう!」

「お世話になりました」

「ええ、気をつけて行きなさいよ」

ゴンとセルシアの言葉に、ゼブロさんは笑顔でうなずく。
そうして、試しの門をクリアした4人はゾルディック家の屋敷に向かって歩き始めた。

(たった20日で門を開けてしまうとは…たいした人達だ。彼らなら、屋敷まで辿り着けるかもしれないな…)


4人はゼブロのアドバイスをもとに、山道を歩いて行く。しばらく道なりに進んでいくと、道の途中に門柱が現れた。

柱の前に人影が立っている。

「出て行きなさい」

そこにいたのは、十代半ばくらいの少女。黒い礼服に身を包み、手にはステッキを持っている。

「あなた達がいる場所は私有地よ。断りなく立ち入ることはまかり通らないの」

ゴンが試しの門から入ったことなどを説明したが、少女の態度は変わらなかった。

「とにかく、大目に見るのはここまでよ。ここを一歩でも越えたら実力で排除します」

ゴンはゆっくりと少女に近づく。その足が門前の線を越えた瞬間

バキッ

「ゴン!!」

少女は持っていたステッキでゴンをおもいきり殴り飛ばした。他の3人は、少女に向かって武器を構える。

「レオリオ!クラピカ!セルシア!」

しかし、そんな3人をゴンが止めた。

「手を出しちゃダメだよ、オレに任せて」

「でも…」

セルシアが心配そうにゴンを見つめる。
すると、ゴンは顔についた血をぬぐって立ちあがり、にかっと笑った。

「大丈夫だよ!セルシア、オレを信じて」

「ゴン…」

セルシアはゴンの笑顔を見て――その瞳に宿る強い意志を感じて、ゆっくりと頷く。

ゴンは少女に顔を向けた。

「オレ達、君と争う気は全然ないんだ。キルアに会いたいだけだから」

「…」

その時、ほんの一瞬、少女の瞳に光が灯ったのをセルシアは見逃さなかった。

「理由がなんであれ関係ないの。私は雇い主の命令に従うだけよ」

少女は再び感情を消した表情に戻り、ステッキを構える。ゴンが少女に近づき、少女はゴンを殴った。

何度も何度も、それが繰り返された。殴られたゴンが起き上がり、少女に近づき、少女がゴンをステッキで殴る。

何度でもゴンは立ちあがった。その顔は醜く腫れ、片目は塞がってしまっている。


空が薄暗くなり、夕闇が迫ってきた。


「…もう…やめてよ…」

とうとう、少女は小さく呟く。

「もう来ないで!」

それでも、ゴンは近づいて来た。少女は再びゴンを殴り飛ばす。

「いい加減にして!無駄なの!わかるでしょ!!あんた達も止めてよ!仲間なん…」

少女は途中で言葉を飲み込んだ。

後ろにいる3人は微動だにしない。ただ、ゴンと少女のやり取りをじっと見つめている。
その瞳を見て、少女は身震いをした。

「なんでかな…」

ゴンが低い声で呟く。

「友達に会いに来ただけなのに、キルアに会いたいだけなのに…なんで、こんなことしなきゃいけないんだ!!!」

ドカッ

ゴンは少女の脇にある石柱を拳で殴った。音を立てて崩れる柱に驚き目を見開いた少女は、ゴンの足が境界線を越えていることに気づきステッキを握り直す。
大量の汗を浮かべてゴンを見据えるが、その手は小刻みに震えていた。


「君はミケとは違う」

ゴンのはっきりした声に、少女は固まる。

「どんなに感情を隠そうとしたって、ちゃんと心がある。…キルアの名前を出したとき、一瞬だけど目が優しくなった」

その言葉を聞いた少女は、やがて震えながら、絞り出すような声で言った。

「お願い…キルア様を助けてあげて」

パンッ

涙を流した少女が、乾いた音とともに倒れる。

「全く。使用人が何を言ってるのかしら」

「!!」

セルシアは急いで少女に駆け寄り、声のした方へ顔を向けた。いつからそこにいたのか、茂みの中にドレスを着た婦人と着物姿の子供が立っている。

ドレスを着た女性はセルシア達にキルアの伝言を伝えた後、自分はキルアの母だと名乗った。

「今、キルは自分の意志で独房に入ってます。ですからキルがいつそこから出てくるかは…あら」

そう言いかけて、キルアの母――キキョウは突然4人に質問した。

「あなた達…他にお仲間はいらして?」


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