Ocean blue | ナノ
秘密 01
(12/99)


「この部屋で50時間過ごしてもらえば、先に進めるドアが開くので待っていたまえ」

小部屋にはテーブルとお茶、本棚やテレビなどが置いてあった。
6人が座ったりお茶を飲んだりしてくつろぎはじめると、クラピカはキルアに尋ねた。

「キルア、さっきの技はどうやったんだ?」

「技ってほどのもんじゃないよ、ただ抜きとっただけ。・・・ただし、ちょっと自分の肉体を操作して盗みやすくしたけど」

キルアは爪をナイフのように鋭く変形させてみせる。

「親父はもっとうまく盗む。抜きとる時相手の傷口から血がでないからね。・・・それより」

キルアはセルシアに視線を送った。

「オレはそっちの方が気になるんだけど。なんで、もう服乾いてるわけ?」

セルシアはぎくりとしてキルアを見返す。その言葉に、クラピカや他のメンバーもセルシアに注目した。

(キルアって本当・・細かいとこによく気がつくよね)

セルシアは長袖を脱ぐと、お礼を言ってクラピカに返す。

「確かに・・全く濡れていないな」

「セルシアさ、オレが前に聞いた時『話すと長いから』って言って教えてくれなかっただろ。
けど、今ならたっぷり時間があるぜ?」

キルアは不敵に笑った。

「・・・・・そうだね」

降参だ。セルシアはふっと息をつき、話し出した。


「水を操れる!?」

「うん。私の家系は、稀にそういう特別な能力を持つ子供が生まれてくるの。
その子は『水神の子』と呼ばれて大切に育てられる…と言っても修業は人一倍厳しかったから、何度か死にかけたけど」

「…じゃあ、その能力は遺伝的なものってこと?」

「多分ね…50年に1人くらいの確率らしいけど、詳しいことは私にも分からない。資料が少なくて」

セルシアはそこで言葉を切ると、重い気持ちを吐き出すように言った。


「弟は…テンダは、『水神の子』と間違えて連れ去られたの」

「!!」

「このロケット」

セルシアは首にかけていた銀色のペンダントを取り出す。

「本当はテンダの物なの。これは身分証明証みたいなもので、中に自分の写真をいれて持ち歩くのが家の慣わしだった。
普通は家族全員銀色なんだけど、私のは金色で…ある日、私達はお互いのロケットを交換した。テンダが金色を持ってみたいって言ったから…本当に偶然だった」

「その日、奴らはテンダだけを生かして連れ去った。金色のロケットと一緒に…」

(それが『水神の子』の証だと知っていたから…)

思い出すたび、激しい怒りが込み上げてきて、目が眩みそうになる。

そんなセルシアの様子に気づいたのか、クラピカが口を挟んだ。

「もしかして…それはリステンか?」

「!…うん」

「リステン!?なんだそりゃ新種のリスか?」

クラピカが「そんなわけないだろ」という顔でレオリオを見る。

「世界で最も硬い金属の名称だ。炭素と結合するとダイヤモンドに匹敵するほどの硬さになり、その構造は…」

「あーウンチクはいい!で、そのペンダントがそうなのか?」

「私が住んでいた島には、有名なリステンの採掘場があったの。そこを領有していたのが私の家」

「襲ってきた奴らは金だけでなく採掘場の権利書も奪っていった……でも、よくこれがリステンだって分かったね?」

クラピカが頷く。

「文献で読んだことがある。たしか…通常の銀灰色に比べ、金色は非常に希少価値が高いとか。
先程の話を聞いて、思い出した」

「…クラピカって、本当に物知りなんだね」

セルシアは目を丸くさせて感心した。


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