秘密 01
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「この部屋で50時間過ごしてもらえば、先に進めるドアが開くので待っていたまえ」
小部屋にはテーブルとお茶、本棚やテレビなどが置いてあった。
6人が座ったりお茶を飲んだりしてくつろぎはじめると、クラピカはキルアに尋ねた。
「キルア、さっきの技はどうやったんだ?」
「技ってほどのもんじゃないよ、ただ抜きとっただけ。・・・ただし、ちょっと自分の肉体を操作して盗みやすくしたけど」
キルアは爪をナイフのように鋭く変形させてみせる。
「親父はもっとうまく盗む。抜きとる時相手の傷口から血がでないからね。・・・それより」
キルアはセルシアに視線を送った。
「オレはそっちの方が気になるんだけど。なんで、もう服乾いてるわけ?」
セルシアはぎくりとしてキルアを見返す。その言葉に、クラピカや他のメンバーもセルシアに注目した。
(キルアって本当・・細かいとこによく気がつくよね)
セルシアは長袖を脱ぐと、お礼を言ってクラピカに返す。
「確かに・・全く濡れていないな」
「セルシアさ、オレが前に聞いた時『話すと長いから』って言って教えてくれなかっただろ。
けど、今ならたっぷり時間があるぜ?」
キルアは不敵に笑った。
「・・・・・そうだね」
降参だ。セルシアはふっと息をつき、話し出した。
「水を操れる!?」
「うん。私の家系は、稀にそういう特別な能力を持つ子供が生まれてくるの。
その子は『水神の子』と呼ばれて大切に育てられる…と言っても修業は人一倍厳しかったから、何度か死にかけたけど」
「…じゃあ、その能力は遺伝的なものってこと?」
「多分ね…50年に1人くらいの確率らしいけど、詳しいことは私にも分からない。資料が少なくて」
セルシアはそこで言葉を切ると、重い気持ちを吐き出すように言った。
「弟は…テンダは、『水神の子』と間違えて連れ去られたの」
「!!」
「このロケット」
セルシアは首にかけていた銀色のペンダントを取り出す。
「本当はテンダの物なの。これは身分証明証みたいなもので、中に自分の写真をいれて持ち歩くのが家の慣わしだった。
普通は家族全員銀色なんだけど、私のは金色で…ある日、私達はお互いのロケットを交換した。テンダが金色を持ってみたいって言ったから…本当に偶然だった」
「その日、奴らはテンダだけを生かして連れ去った。金色のロケットと一緒に…」
(それが『水神の子』の証だと知っていたから…)
思い出すたび、激しい怒りが込み上げてきて、目が眩みそうになる。
そんなセルシアの様子に気づいたのか、クラピカが口を挟んだ。
「もしかして…それはリステンか?」
「!…うん」
「リステン!?なんだそりゃ新種のリスか?」
クラピカが「そんなわけないだろ」という顔でレオリオを見る。
「世界で最も硬い金属の名称だ。炭素と結合するとダイヤモンドに匹敵するほどの硬さになり、その構造は…」
「あーウンチクはいい!で、そのペンダントがそうなのか?」
「私が住んでいた島には、有名なリステンの採掘場があったの。そこを領有していたのが私の家」
「襲ってきた奴らは金だけでなく採掘場の権利書も奪っていった……でも、よくこれがリステンだって分かったね?」
クラピカが頷く。
「文献で読んだことがある。たしか…通常の銀灰色に比べ、金色は非常に希少価値が高いとか。
先程の話を聞いて、思い出した」
「…クラピカって、本当に物知りなんだね」
セルシアは目を丸くさせて感心した。