昨日の夜、雪が降ったらしい。

あと一年前だったらはしゃいでいたかもしれないけど、私ももう高一だ。
そのくらいではしゃいでいられない。

というか、実を言うと降らないでほしかった。
…だって、ふわふわな雪じゃなくてカッチカチの雪なんだもの!!

ふわふわだったらさ、踏んでみたり雪合戦してみたり、いろいろ出来るのに。
なんで固まっちゃってんのさ。
あぁもう!
こんなんで雪合戦なんて出来るわけない!(絶対痛い。)
そして絶対滑る!(転びたくねぇー…)

そんなことを思いながらドアを開けた瞬間、いつも嫌というほど見てる(見たくもないのだが)アイツの顔。
あぁ、今日は朝からとことんツいてない。

「やぁ名前、おはよう!」
「やぁ、じゃないよやぁじゃ。なんで大和がここにいるのさ!アンタ家反対方向じゃなかったっけ?」

名前がこの雪で困ってると思ってね、そう言って笑うアイツ。
…確かに困ってるけどさ、来てくれって頼んだ覚えはない。(しかも反対方向から、なんて)



…するといきなり大和が手を出してきた。
「…何?」
「転ぶと困るだろう?」

…根はいい奴なんだ、根は。そこに下心さえなけれぱ。
というか、今日の大和はやけに大人しい。(いつもこうだったらいいのに。)

私はそんなことを思いながら、私が出てくるのを待ってた内に冷たくなったであろう大和の手を取った。
途端、驚く大和。……自分から手を出しておいて失礼じゃないか?

「…今日はやけに素直だね。」
大和はやけに大人しいね。
「別に。コケたくないし?」
「ははっ、やっぱり名前は素直じゃないなぁ!俺と手を繋ぎたかった、って言えばいいのに」
やっぱり大和は大人しくないね。

…うん。素直じゃないよ。
だって、アンタがいっつもそんな調子だから。
…そんなこと、絶対言ってあげないけど。
こんなところが素直じゃないんだろうね、私は。

「…大和の手、冷たい。」
「そうかい?」
「うん。寒い中私のことなんか待ってるからだよ。」

本当に、そう思う。
わざわざこんな所まで来て、呼べばいいのにずっと外で待っててさ。
…こんなに手、冷たくして。

「でも、名前がこうして温めてくれてるだろう?」

…あれ、バレちゃった?
……って、これはいつもの大和の自惚れか。

「…今日だけ、だからね。」

私がそう言うと、またしても驚く大和。
私のためにここまでしてくれるんだ。
だから、これはそのお礼。
今日だけは、素直になってあげる。
…なんて、やっぱり言ってあげないけど。

すると、驚いた大和の顔は優しい微笑みに変わる。

「名前、愛してるよ。」

私がもっと素直になれるのは、もっとずっと先の話。
その時は、私からちゃんと、伝えてあげよう。



繋いだ手から伝わる熱
(だから、もう少しだけ、待っててね。)







10.02.02
………………
結局素直になりきれてないヒロイン。
彼女が素直になるまで、もう少し。


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