「由奈ーーっ!!」
「ッギャーーッ!!離れろ変態っっ!!!!」


──────────


今日は土曜日。最近は晴れの日が続いている。
…まぁ、風はあるし、寒いのにかわりはないのだが。

今日は少し学校に用があったから来ただけ。
午後は特に用事もないので、家に帰ってコタツでぬくぬくするつもり。……だったのだが。


──────────


「なんでここにアンタがいるのさ…」
「由奈に会いに来たに決まってるだろう!」
「そうじゃなくて!部活はどうしたの!?」

そう、帝黒のエースとあろうものが、真っ昼間からこんなところにいていいのか?(ちなみに、こんなところ、というのは校門前だ)

「あぁ、部活ならグラウンド整備で休みになったよ」
「…筋トレとかは?」
「この機会に体を休めろって言われてね。大丈夫!いつもこなしてるメニューはやってきたよ!」
「はぁ、そうですか…。じゃあね」

このままだとアイツのペースに飲み込まれてしまう。
早く家に帰るためにも、大和に別れを告げ、私は駅へと向かった。(あぁ、コタツが私を呼んでいる…!)

なのに…
「なんでアンタまでついてくるのさ!?というかいい加減腰に回した手を離せコノヤローッ!!!」
「ははっ、恥ずかしがらなくてもいいんだよ。俺と由奈の仲だろう!」
「そんな仲になった覚えはありません!」

あぁもう、結局大和のペースだよ。
さっきの私の「じゃあね」が聞こえなかったのか!?
…なんて、私の心の叫びが大和に届くはずもない。
分かってる。分かってるともさ…!

「それで、どこへ行くんだい?」
「さっきのじゃあねって聞こえなかった?」
「そうだね、いつもの喫茶店にしようか!」
そう、心の声どころか、口に出した言葉さえもスルーなんて分かってたさ…!(そしていつもの、ってなんだいつものって)
私が心の中で自問自答を繰り返してると、不意に頬にあたった一粒の水滴。

「あ、雨…」
「本当かい?」
「うん、今ほっぺにあたった。」
「困ったなぁ。今日は傘持ってきてないんだ」
「へぇー、私はちゃんと持ってきたよ」
「え、由奈入れてくれるの?」
え、そんなこと一言も言ってませんけど。
でも、さっきより雨は確実に強くなりつつある。(といっても、今は小雨程度だが)
…このまま濡れて帰ったら風邪、引いちゃうかもだよね。
(このくらいで引くのかは謎だが)

「……狭いけど、それでもいいのなら。」
「……え?」
「なに?自分から言っといて、やっぱ嫌だとか言わないでよね、…って、……え?」言いながら大和を見てみる。…と、
私から目をそらし、口に手を添えている。
その顔は心なしか、赤い。

「…って、ちょ!自分から言っといて何照れてんのさ!」
「いや、まさか由奈がOKしてくれるなんて思わなくて…」
「いくらアタシだって、自分だけ傘差しといて「アンタは濡れて帰れ」だなんていいません。てか、断っても入るつもりだったんでしょう?」
「…あぁもう、ホントに可愛いなぁ、由奈はっ!」
「っぎゃー!!抱きつくな!バカッ!!!」

アンタのバグは力強すぎるんだってば!!!
痛い痛い痛いっ!!!!!
「と、とりあえずっ!!とりあえず離れろっ!!傘差せないからっ!」
「ははっ、ごめんごめん」

あーもう。
こうしている内にも少し塗れちゃったじゃないか!
まだ小雨だったから良かったものの…!

私が傘を開く…と、それは大和に奪われた。
「え、ちょ…?」
「俺が持つよ」
「いやでも、いいよそんな!」
「ははっ、この身長差だと腕が疲れちゃうだろう?」
「う…。……じゃあ、お言葉に甘えて…」

…こういうとこ、優しいんだよね。
普段からこうだったらいいのに……


…すると、大和は突然傘を左手に持ち替え……

私の腰を抱いてきた

「ちょ…!なにすんのさこの変態っ!!油断も隙もありゃしねぇ…っ!!!!」
「こうでもしたいと濡れちゃうだろう?」
「そりゃまぁそうだけど…、って、オイコラどさくさに紛れてお尻を触んな死ね大和っ!!!!」

確かに雨は強くなりつつある。
狭い傘に2人も入ってるんだから、多少密着するのは仕方ない。
けど、けど…!
セクハラされるなら濡れたほうがマシだ!

「やめろこのセクハラ野郎っ」
「ははっ、セクハラじゃなくてスキンシップさ!」
「ちげえぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」

そんなこんなで攻防戦を繰り広げてると、駅に着いた。
とりあえず、ずくさま私は大和から離れ、別れを告げる。

「じゃあね!アタシこっちだから!!」
「もう行っちゃうのかい?」
「急いでるんだ!じゃっ!!!」
「ははっ、またね!」
できればもう二度と会いたくないです!
そう心の中でツッコミながら、私はホームに向かった。



スキンシップじゃなくてセクハラです
(あれさえなければ普通にカッコいいのに…)



ちらっと見えたあいつの肩は濡れていました。

「…ちょっと見直した……かも…」

呟いた私の言葉は、誰に聞かれることもなく宙に消えた。
今度機会があったら、お茶くらい付き合ってやろう。





10.01.27
………………
長い。ひたすら長い。そしてベタだ。
大和は不意打ちに弱いといい^q^

精進します…



- ナノ -