7人7色の恋 by Mike and Betty
5.恋愛対象

 きっかけをつくってくれた14日にどれほど感謝したか知れない。


 塾のアルバイトで数学を教えている関口先生。
 いつから好きになってたかは覚えてなくて、気がつけばいつも目で追っていた。
 塾の生徒とも仲が良くて。まるで友達みたいに接してる。

 ねえ、先生。好きでいても、いいですか?

 今日は2月14日。バレンタインデー。
 今日は丁度塾がある日で、大半の塾生の人にはなんにもない普通の日なんだけど……
 一部の女子は、違うのです。
 テキストやら筆記用具やらを入れているかばんに、いつもはない可愛い袋が入ってる。
 そう、今日は好きな人に、チョコレートをあげる日。
 私もそのイベントにあやかるうちの1人なわけで。
 ……だって、こんな風にきっかけがないと私はずっとこのまま。
 しかも関口先生は人気があるから、もしかしたら今日彼女が出来ちゃうかもしれない。
 気持ち、知ってもらうだけでもいいから。

 そんなことを思って塾に来たんだけど、入ると早速女子の群れが。
 その中心には関口先生がいる。
 ああ、やっぱりなあ……。
 あの女子の群れに入るのは無理なので、授業の後にでも渡そうと思い直す。

 しかし、授業の前後も女子の群れでいっぱいだった。

 結局先生の授業のときに渡せないまま、最後の教科が終わってしまった。
 あーあ、帰りだっていっぱいだよね……。
 女子に囲まれる先生の姿が容易に浮かぶ。
 こうなったらいっそのこと神頼みしかない!
 そんなことを思って教室を出ると、そこには先生がいた。
 私は片づけが遅かったから、周りには誰もいない。
 先生の周りにもいない。
 ……チャンス……!

「先生っ!」

 呼びかけると、先生は驚いたようにこちらを向く。

「篠原、早く帰らないと危ないぞ?」
「わ、分かってます! ……じゃなくて……」

 がさごそと鞄の中から箱を出す。
 不器用ながらの、頑張ったラッピング。
 それを両手で持って、先生の方にえいっと腕を突き出す。
 恥ずかしくて、顔を見れない。

「……もらって下さい……!」

 しばし、沈黙が落ちる。
 迷惑だったかと思って先生の顔を見ようと顔を上げると。
 先生は驚いた顔をしていた。

「あの、先生?」

 呼びかけてやっと、こちらを見返す。

「うん、ありがとう……嬉しいよ。ほら、もう帰らなきゃ」

 そう言ってそのまま帰らされそうになる。

「先生っ、まだあるんです!」
「え?」
「…………先生が…………」

 ああもう、言うんだ自分!

「先生が……好きです……!」

 言った自分が恥ずかしくて、その場にいたたまれなくて。
 先生の顔すら見ないまま、そのまま走って帰ってしまった。

 ああもう馬鹿! 何で言ってしまったんだろう……。
 返事すら聞かずに帰ってきてしまったから、次の塾が怖い……。
 そんな思いで家に帰ると、丁度電話がかかってきた。
 廊下にある電話は玄関からすぐ近くなので、靴を脱いだ流れで電話に出る。
 
「もしもし?」
『夜分遅くにすみません、塾の関口と申しますが……』
 あの、好きな声が電話から聞こえた。
「せ、先生?!」
『篠原? ああ良かった』
「ど、どうしたんですか何かありましたか?!」
『いや、篠原あの後帰っちゃうから……返事できないじゃないか』
「え……」
『菓子、ありがとう。それで、あの返事なんだけど……』
「…………」
 ごめん、そう言われるんだと思った。
『ごめん』
 ほらやっぱり。

『好きになっても、いいかな』
「へ?」
『塾の講師が、塾生を、好きになってもいいのかな』
「……それって?」
『うん、俺も好きだよ』

 そんなことって、あり?

 それじゃあまた塾で、って言って電話を切った。


「ねえ貴君、バレンタイン覚えてる?」
「は? ああ、詩が告白してきたときのね」
「あの時ね、言ってよかったなあって思ったよ。バレンタインにあれほど感謝したことないね!」
「はいはい、んなこと言ってる間にこの問題解け」
「はーい」

 ねえ 幸せね
 想いが通じ合うって
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