文字 | ナノ



滝夜叉丸は、先輩である七松小平太が好きだといった。少し照れたような顔をして、控えめに、ナイショの話だよ言わんばかりの声音で、ぼくに耳打ちしたのだった。知ってたよ、そう返せば滝夜叉丸は大きな目を見開いたあと、いっそう頬を赤らめるのだ。そ、そうか、と言葉が迷子になっている滝夜叉丸を見て、ぼくは非常につまらない気持ちになった。ぼくね、滝のこと応援してる。言うと、滝夜叉丸は心底嬉しそうに笑うのだ。胸がチクリと痛んだ気がした。


◎おおうそつき