文字 | ナノ



※ちょっと汚い



「僕はどこもおかしくなんかないさ、留三郎も変なことを言うなあ」
あはは、伊作が笑った。手に持ってる薬を伊作が飲む、暫くしたらこいつは厠に行くんだ。おれは知ってる、伊作は毎晩毎晩毎晩毎晩薬を飲んでから厠に言って胃の中のモノを全て吐き出しているのを知ってるしその瞬間伊作が嬉しそうな顔をするのも知ってるし流れていく嘔吐物を見ながら満足そうに笑うのも知ってる、伊作は毎晩毎晩それを続けている。ちょっと厠に行ってくるね、そう言って伊作は部屋を出ていってしまった。伊作はおかしいんじゃないか、おかしくなんかないさ、そりゃそうだ、そういうのは自分では理解出来ないものだ。おかしいやつほど自分はおかしくなんかないと言う、伊作はもう駄目かもしれない。


(留三郎は、バカだなあ)
流れる嘔吐物と独特の臭いに囲まれた小さな個室で思った。なんにも気付いてない。無自覚ほど恐ろしいものはないなあと思うの、留三郎は自分がおかしいこと全然気付いてないんだから。
「留三郎は、バカだなあ」