今日はエイプリルフールだ。
ふと自室のカレンダーを見れば1の下に小さくエイプリルフールと書いてある。
鶴丸が聞いたら大喜びしそうな日だな。

私は一応審神者をしている。
ブラック本丸でもなく、普通に、平凡に刀剣たちと過ごし、ぼんやりとしている事が多い。この本丸には審神者が喉から手が出るほど欲しがる三日月や小狐丸。レア太刀と言われる鶴丸や鶯丸、蛍丸も居た。別に誰が来てもいいかなーと無心で鍛刀していたところ、こいつらが出てきた。そんな事言ってたら、散々欲しがってる審神者さんにぶん殴られそうだな。
皆それなりにいい子で、私のことを好きと言ってくれる刀も居る。まあ、それはもちろんライクだとはわかっているが、というかそうでなくては困る。

「ぬしさま!きょうのおやつはなんですか?」
「あ、あぅ…主様の作るものは何でも美味しいです…!」
バタバタと短刀たちがやってきて、おやつをせがむ。その後から一期一振がゆっくりとやってきて、いつも弟たちがご迷惑をお掛けしております。と頭を下げているけど、下げられては困ると慌てて顔を上げさせた。

「主殿は本当にお優しいですね」
そう言って微笑む一期さんの王子オーラが半端ない。
和やかなのはここらへんだけだ、三日月ら辺は何というかあまり近づきたくない雰囲気を漂わせている。顔がくっそイケメンだからその顔面をこっちに向けるな、耐性とか持ってないんだよという表情で三日月を睨めば、「はて?」と妖艶な笑みを浮かべて首を傾げる。
何だ、確信犯か。じじい怖いわ
鶴丸に関しては、サプライズパターンが掴めつつあるので、逆に私から仕掛けている。
例えば落とし穴。あからさまに不自然な地面を大回りして回避するとあちら側から鶴丸がやってくる。その付近に私の掘った落とし穴があり、鶴丸は見事に落ちてm9(^Д^)プギャーである。風呂場を覗きこんでくる、驚きというよりもただのスケベ行為にはしっかりと対策がしてあり、風呂の扉を開けたと同時に催涙スプレー噴射+たらい落としという二重仕掛けである。
案の定、この間その罠にまんまとハマった鶴丸は風呂場で倒れ、悶え苦しみ気絶した。
次目を覚ました時には目がかなり充血していて、これで悪さはしないだろうとは思ったがまだまだあのびっくりじじいは学習しなくて大変困惑しているところだ。
しかも変なところで雰囲気が一変して怖くなったりするから侮れない。戦場の鶴丸はきっとすごい気迫なんだろうなと思いつつも、そんな鶴丸を拝まない事を祈った。

しかしこのエイプリルフール。
彼らが今日、嘘を吐いていい日だと知らない限り私が発した言葉は全て真実だと捉えるだろう。
普段から私が嘘ばっかり吐く信用ならない人物であるなら話は別だが、生憎私は悪質な嘘は吐かない。少なくとも相手の気分を悪くさせるような嘘は吐いてはいないつもりだ。

ふふ、だから今回のこのエイプリルフールで皆を驚かせてやろうじゃないか。
なんだか鶴丸の性格に似てきた気がしてきて自分の事だがすごく残念な気持ちになった。あんなじじいに似るとか末期だわ…。

ドッキリ大成功という看板を自室に置いておいて…あれがゴールだ。
もちろん、逃走劇である。嘘だぴょんと言ったってそんなすぐに信じてくれないだろう。私は知っている。嘘の言葉ほど信じようとするのは目に見えている。

大広間に居るであろう刀剣たちの元へと向かい、襖を音を立てて開ける。

「よぉ、大将。どうした?」
「主じゃないか、どうだ?一杯飲むか?」
昼間から酒飲んでるのかよこいつら。
呆れつつも辺りを見渡すと、太刀や大太刀の連中は大広間で楽しく話をしているようだ。打刀も脇差も居る。短刀は外で元気よく走り回ったりしているようだ。

自分は酒は結構イケる口なため、夜には大太刀や太刀の連中に付き合っている。いくら強いからとはいえ、三日月や鶴丸ら辺がぐいぐい進めてくるものだから、気持ち悪くなり、吐いてしまったことがある。何なんだあいつらは、飲兵衛よりタチが悪いんじゃないかって思う。
そんなお前らにエイプリルフールを楽しんでもらおう。

「突然だけど、私さ…事情があって審神者辞めることにしたから。既に次の審神者が来るように手続きしてあるから大丈夫。…ってわけで短い間だったけど、ありがとう。じゃあ、さようなら」
そう言って手を振って襖を締めた。
この後の展開は嫌でもわかるだろう。

「どういうことだ主いいいいいいいいい!!!!」
追いかけっこの始まりである。

私は襖を締めた瞬間に玄関に一直線に全力疾走した。しかし予想を超える早さで庭からこちらに向かってきたのであろうへし切長谷部が玄関を塞ぎ、私の前に立ち塞がっていた。流石、機動力お化けの打刀だな。
一瞬ひやりとしたが、私はすぐに玄関に向かう足を方向転換させ、庭へと向かった。

「主!!主!!何故ですか…!!」
悲痛の叫びと共に後ろから長谷部が追ってくる足音が聞こえるが、無視。ちょっと心が痛いが、エイプリルフールだ。許してくれ長谷部。
庭に向かおうとすると横から私を転ばせようと足を掛けてくる蛍丸の姿が見えて、反射神経がほどほどに良いと思われる私はその足をひょいと避ける。
この勢いで転んでたら下手したら捻挫してたわ、蛍丸の目がガチだったので我ながら相当ヤバイ状況に追い込まれていると見る。
庭に出ると誰も居なかったが後ろから恐ろしいほど声が沢山響いている。すごいホラー。

門を開けている暇など無いので塀に飛び乗り、外へと出る。
よし、第一関門クリア。
もし三条に捕まってたら命なかったわなどと寿命が縮みそうな嫌な想像をしつつ、街に出て適当に屋台に入った。
確かここの和菓子屋は裏口もあったな。もし入ってこられても後ろから出られるので積んではいない。
ゴールは自室なのだ、また本丸へと戻る最難関があるために体力を温存しておかないと…。

「ああ…ああぁあ…主ぃいい…何で…何で…俺たちを捨てたの…やだ、やだやだやだやだやだやだやだああああ」
近い場所で清光が泣き叫んでいる。
完全に私悪になってますやん。確かにかなり悪質な嘘で皆を傷つけてはしまったけれど…!!エイプリルフールだからってちょっと調子乗ってしまったけれど…!!
真顔で席に座りつつ、様子を伺っていると清光の泣き叫び声で他の刀剣たちが集まってくる。おいこっち来んな。
鶴丸とか小狐丸とかも居る。…気配に敏感で、特に小狐丸は嗅覚が異常に発達していて、私の匂いがわかるらしい。
案の定、小狐丸の耳がピンっと伸びて匂いをくんくん嗅いでこちらへとじわじわと近寄ってくる。

「どうした、小狐丸?」
「…ぬしさまの匂いがします。こっちに近付けば近付くほど濃くなっています…まさか、この店…」
そう言った瞬間に私は裏口をお借りしてそっと出た。
気配を勘付かれないようにそっと、そっと歩いて本丸の場所へと向かおうとするけど、目の前には一期一振や骨喰、鯰尾が居て、一期と目があった。その瞬間、一期は目を見開き、怒りと悲しみを含んだ目で私を見ては、こちらへ走ってきた。
あ、ヤバイ。

「主!!!何故逃げるのですか!?」
「ごめん、一期!!鯰尾、骨喰も!!ホントごめん!!」
そう言いながら猛ダッシュする。我ながら、クソみたいな審神者だと思う。ごめんだけで済まそうとするクズの鑑である。
これが嘘じゃなくて本当にしたことなら、ブラック本丸化不可避だ。

「説明してください主さま…!!何で、俺達を置いてどこかに行っちゃうんですか…!?」
「…主…、置いていかないでくれ」
背後で響く鯰尾と骨喰の声に私は泣きそうになった。
まさかこんなに辛いことだとは思わなかった。嘘を明かしたらめちゃくちゃ甘やかす。というか甘える。
ぐっ、と振り向いて二人を抱きしめたい気持ちを抑え、脇道を通り本丸へと走った。

「はぁ…っ、は…」
流石にキツイ、これ以上は全力では走れないかもしれない。

本丸の道沿いをぎこちなく歩いていると、気配なく背後から腕を掴まれた。

「…っ!?」
驚いて振り返れば、「驚いたか?」と普段のイタズラっぽい笑みを浮かべる鶴丸が居た。
こいつ、こんなに気配消せたか…?
唖然としながらも、いつもの笑みを消し、急に真顔になる鶴丸に背筋が凍りつく。
「しかし主、急に審神者を辞めて本丸を出て行くという驚きは全くいらなかったなぁ?」
真顔でそう言い放ち、私の腕を掴む鶴丸の手にぎりっ…と力が込められる。
痛い痛い痛い、コイツガチだ!というか皆ガチだ!
冗談ですよね?とか言う奴は居ないのか!?みんな信じちゃうの!?冗談ですよね?って言われたら、はいそうです!って元気に答えちゃう勢いなんですけど!?


「うん、ごめん。ホントごめん」
そして私のこの有り様である。

ごめんと連呼したところで、鶴丸を背負い投げし、駆け出した。
本丸へ入ったところで、自室付近に誰かの気配を感じたため、咄嗟に近くの部屋の押入れに入る。
待って待って、もしかして自室で出待ちしてる?!
押入れに身を潜めながら動揺を隠せない私。
もしかして嘘だってことがバレてるとか?…いや、それはそれでいいけど、明らかにそういう雰囲気じゃなかったし、何で本丸に戻ってくることがわかったんだろう…。
思考がクエスチョンマークでいっぱいになったところで、それが一気に弾けるような声で目が覚めた。

「ぬしさま…ぬしさま、ここに居るのでしょう…?隠れていらっしゃるのなら、おいでになってください…この小狐めはぬしさまに無礼など働きません故…どうか」
声だけで耳がシュンとなっているだろう事がわかる。
しかしはいそうですね、こんにちはと押し入れを開けるわけにはいかないんですよ小狐丸さんよ。
無言を貫いていると、小狐丸の気配が近づいた。うん…多分これ押入れの目の前に居るわ、めっちゃ怖いんだけど…。
「ぬしさまは…私達を置いて出て行ってしまう程に大事な何かがあるのですか?」
「………」
「ああ…小狐は醜い感情を隠しきれません。その大事な何かを壊してしまいたい…ぬしさまがこの本丸にずっと…ずっと居てくださるためならば、この小狐めは何でも致します。たとえ自分が汚れたとしても、…ああ…いえ、もう汚れておりますが」
一方的に喋る小狐丸は狂気を孕んだ声色で押入れに視線をずっと向けている。
小狐丸が言ったことを簡単に直訳すれば、「お前の大事なものを壊すぞ、この本丸から出られなくするぞ」と言っている。遠回しに言われると恐怖度が増すので是非やめてほしい。

「ぬしさまがこのままずっと話さないと言うのなら、小狐に考えがあります」
そう言った瞬間に押入れの襖を開けて私を捕まえると床に放り投げた。私は唐突な事に状況を読み込むのに少し遅れてしまい、ハッとしたときには小狐丸の顔と天井がはっきりと見えていた。
小狐丸は私の頬や唇をするりと撫でるとその手は下半身に移動した。狂気的な瞳に熱を灯し、うっとりと見つめてくる様子は恐怖を煽った。
「ぬしさまのここに、神気を流し込んでぬしさまを私達の神域へと連れて行って差し上げましょうか?」
ここと小狐丸の手は太ももをゆっくりと撫で、密部を突く。
ひゃっと変な声が出てしまった私は顔が熱くなった。
愛らしいと小狐丸は笑いながら私の口に噛み付く。獣のような激しいキスだった。息をするのもままならず、抵抗も苦しくて出来ない。そんな私を逃さないように両腕できつく抱きしめて、啄むようなキスをしながら無理やり口の中に舌を割りこませてきた。
ぬるりとしたものが口の中に入ってきて戸惑いを隠せない私は暴れるものの、がっちりと身体を抱きしめられているために抜け出せない。
これはヤバイ。流されたら終わると考えているうちにも行為はさらに進んでいく。本当に私と交わるつもりなのかこの狐は!!
絡ませてくる舌を思い切り噛もうとしたが、それを許さないほど、ムカつくけどコイツキスがめちゃくちゃ上手い。瞬時にさくらんぼのヘタ結べる奴だコイツ!!力が抜けて言うことを利かない。
私のシャツのボタンをプチプチと外す音が鮮明に聞こえる。
ええい、女は度胸だ。と私は力を振り絞って思い切り小狐丸の頭に自分の頭をぶつけた。ゴンッと鈍い音が響き、小狐丸は「う”っ…」と唸ると拘束が緩くなった隙に奴から抜けだした。石頭でよかったと思う。自分はさほど痛くはなかった。

ごめんねと安定の謝りで部屋を飛び出したら庭には短刀たちが居て、私を見つけると一席に皆が泣き出した。薬研は険しい顔でこちらを見ていた。
なんだこれ、胃が潰れそう。皆がそんなに私を必要としてくれてたなんて嬉しい半面、ものすごく申し訳ない気持ちになる。だったら最初からやるなって話だけどな!!
そろそろネタバラししようと自室へ向かったけど、その自室の前に佇むのは三日月だった。何この圧倒的ラスボス感。そして私の雑魚さ。勇者レベル1が魔王に装備なしで挑みに行った感じだよ!
三日月はゆっくりとこちらに視線を向けると、笑みを向けた。ただし、目は笑っていない。

「主よ、先ほどの言葉は本当か?」
「(嘘です…と言いたい)……」
「その沈黙は肯定と見なすぞ?何故ここを出て行く。それほどに大事なことなのか?俺たちを置いて行くほどの…ことか?」
さすが三条。小狐丸と言ってることと同じだ。そしてこのパターンは一番ヤバイことだとさっき知った。
「選べ、主。その事情とやらを諦めてここに残るか、それとも…」
そう言って三日月は私を見据えたまま刀を抜いた。
「俺に殺されるか、…さあ、選べ」
あかん、殺されるまでにアカンかった。

私は顔を青くさせて向けられた刀を見る。その矛先は鋭く光り、いつも丁寧に手入れしているせいか、輝きは日光に照らされて増していた。おもちゃじゃない、本物だ!
三日月はいつもにこにこ穏やかにしているが、今は無表情。完全に怒ってるじゃないかいい加減にしろ!
「何、安心しろ。主を殺した後、魂は神域へと連れて行く。さすれば、肉体など関係なく滅びることもなく、永久に共に居られるだろう?」
何故三条はこう、歪んだ思考しか持ち合わせて居ないのか。殺したらずっと一緒だねじゃないだろ、考え方が恐ろしすぎる。
じりじりと下がれば三日月はこちらへ一歩一歩じわじわと追い詰めてくる。ああああああ自室が遠ざかって行く…!
背後からは、ガタンと音を立てて襖が空き、先ほど怯んだ小狐丸が頭を抑えつつもこちらへと視線を向ける。
三条サンド…だと…。
完全に逃げ場が無くなった私は、後ろへ下がることをやめる。その間にもゆっくりと確実に距離を詰めてくる三日月に、少し目を見開いたものの、状況を理解したのか奴まで抜刀する始末。死亡フラグが乱立している…!そこで抜刀してないでとめろよ小狐丸!!!
さすが三条だ。やることを意思疎通出来るとはさすがだ。全く褒めてはいないが。


私は潔く諦めることにした。
だってこんなの無理ゲーじゃないですか。こんなタチの悪い嘘を吐いた私が悪い…腹を括ろう。
その場に座り込んだ私を見ては、一瞬悲しそうな顔をしたがすぐ嬉しそうに微笑む三日月にうっとりと目を細める小狐丸。

「覚悟を決めたか、主。良い心構えだ」

「なるべく痛くしないようにしますからね、安心してください」

三日月と小狐丸は私の心臓に目掛けて刀を突き刺そうとした…私はぎゅっと目を瞑り来るであろう痛みに耐えた……とでも思ったか馬鹿め!!

私は目を見開き、2人が振りかぶった瞬間に隙間から逃げ出した。
三日月と小狐丸はそのままの衝動で刀を打ち合った。驚いて私が逃げた方向を見て、待てと叫ぶ。
私は急いで自室へと駆け込み、ドッキリの看板を持って自室の中心で仁王立ちをする。完璧……なのか?何ともシュールな光景である。

少ししてからバタバタとこちらにやってくる足音が聞こえ、スパァンと自室の襖が開いた。
入ってきたのは三日月を筆頭に小狐丸、鶴丸、一期や燭台切、長谷部らだった。



「ドッキリ大成功〜〜〜〜〜イエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

看板を高らかに上げて私はそう叫んだ。あ、痛っ!!看板が天井に当たった。
皆はポカーンとした様子で動かずにただそのドッキリ大成功と書かれた看板を見ていた。


「主…これは一体どういう…」

困惑した様子で一期が首を傾げる。



「だから、ドッキリだって。嘘。私が審神者辞めてこの本丸出てくなんて嘘って言ったの」

「主よ、タチの悪い嘘を吐くでない。本気にしていたのだぞ」

いつものほほんとしている三日月にそんな要素はなく、刺がある不機嫌な様子であった。

「う、うん。それは、本当にごめん…。今日はね、エイプリルフールって言って嘘を吐いても許される日なの。だから皆をびっくりさせたくてね」

まさかこんなに大騒動になるとは思わなかったわ。
特に三日月と小狐丸の本性を見た気がする。これから気まずいじゃねぇか!どうすんだ!私のせいだけど!!


「私は何があってもここを捨てたりなんかしないよ、命あるかぎり」
用事があったら空ける時あるかもだけど。と看板を下に下ろしながら皆を見据えた。


「その言の葉、信じても良いのだな?」
裏切ったその時は…わかるな?と目を細めて口元を歪めた。頭を上限にブンブンして肯定する。アカン、じじいラスボスや。
まあ、そんな捨てるだなんてブラック本丸みたいな事しないから心配しなくてもいいかもしれないけど。

「それにしても、びっくりしたぜ。暫くこういう驚きは要らんな」
「どうなる事かと思いました。弟たちに伝えに行って参ります」と一期はホッと息を吐いて短刀達の元へと向かっていった。


「正直あんた達がそんなに私を慕ってくれてるだなんて思わなかったよ」
嬉しいと頬が緩んだ私に鶴丸は困った顔をした。

「おいおい、今までどう思ってたんだよ?俺は…俺達は君の事大好きだぜ」

まあ、俺は意味合い的に違うけど。とボソッと呟いていたけど聞かなかったことにした。


「ぬしさま、私めはぬしさまが影で精進していらっしゃる事を知っておりました。皆が就寝した後でこっそりと短刀たちを喜ばせようとクリスマスとやらの行事の贈り物を手作りで頑張ってらした事…料理もあまり得意ではないのに私達のご要望にお応えするために手を怪我してでも作ってくださったり、他にも影で私達の事を想って気付かないところで…」

うわ、バレてら!!!!

隣にいた三日月も知っているようで、にこりと絵になるように微笑んだ。こいつら出来る…!!

「だから尚更その嘘が皆の心を抉ったのだなあ。はっはっは」
何かめっちゃ責めてる。威圧感半端ないあのじじい!


「皆にはお詫びに何か贈り物でもあげるよ。はあ、こんな事になるとは。嘘でもこんな嘘吐くもんじゃないね」


エイプリルフールが終わった次の日から皆は異様に私に対して過保護になったり、ひっついてくるようになった。

後々聞けばエイプリルフールを知っていた者は結構居たという。嘘を嘘で返された。何というか、してやられた。主犯は鶴丸のようで、追いかけてこなかった刀はそれを知っていたようだ。当の鶴丸は完璧な演技をしていたな。驚いた。役者にでもなればいい。

長谷部や三日月、小狐丸はどうやら知らなかったらしい。

…ということはあいつらはガチでそういう事を思っていた…というわけだ。ぅゎ怖ぃ
三条ら辺を特に警戒する事になったことは言うまでもない。
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