審神者ではない才能を持った少女 | ナノ






「とりあえず、光忠に会ってやってくれないか?困った顔して探してたからな」
ポンと私の肩に手を置いて、じゃあなーとそのまま振り向かず手を振る鶴丸。

私もさようならと一言言って、離れの自室へと向かった。


「ああ、居た。妹ちゃん、探したよ」
にっこりと微笑む燭台切は離れの廊下に佇んでいた。結界を張っているせいか、やっぱり自室の場所がわからなかったらしい。
私は控えめに頭を下げると、用件を聞いた。


「そうそう、用件ね。この間広間で主と口論になってた事に疑問を感じてね」

「…はい」
三日月だけじゃなく、この人も気付いたのか。これはまずい。私が口を滑らせたからだけどまずい。

「単刀直入で言うけど、キミって審神者としての能力はあるんでしょ?どうして隠してるの?」

「……ありますよ。でも理由は言えませんね」

「僕が信用ならない?」
別に信用してるとかしてないとかそういう事で隠してるんじゃないんだけど、絶対止められるからだ。何の利益も私にとっては害しかない姉を補助する行為が刀剣たちに言ったところでそのままにしておくわけがない。姉を引きずり落としてでも力がある私を主というポジションに置くか、それとも主にはならなくとも姉が…姉が危うい。


「そう。じゃあ聞かないでおくよ」

「あっさりとしてますね」

「そうかな?でも話せるのなら話してほしいな。今のままだとこの本丸は危ないからね」
あの主は…。とやはり悪い印象しか持たない姉の姿。
あの手入れしろ事件から今のところ、姉は全てとは言わないが中傷になったら手入れをしているらしい。しかし相変わらずそれ以外の事では放置。全く、政府に提出する書類は誰が書いてると思っているんだか。

その後、燭台切とはさようならをして、私は掃除へと向かった。
その途中、廊下で倒れている短刀の子を見つけて、私は驚き急いで倒れている短刀の元へ向かった。


倒れていたのは五虎退だった。

どうやら遠征中に敵と遭遇してしまったらしく、深手を負ってしまい、本丸に帰ってこれたのはいいが気を抜いたせいか立ち上がれなくなってしまったとのことだ。
酷い疲労と刀の刃こぼれ。私は複雑な表情になって五虎退を自室へと連れて行く。


「五虎退くん…、大丈夫?…いや、大丈夫じゃないよね。待ってて」

「…うっ…あ、主さまの妹さま…?」
痛みに涙を流し、虎たちもぐったりとした様子で畳に転がっている。
私は自室の結界を再び張り、周囲にバレていない事を確認すると、五虎退の頭に手を当てた。ビクッとした五虎退だが、私から流れる神気に驚き、私を見つめた。

制御していた神気を解放すると、自室にはたちまち膨大な神気が溢れる。五虎退と虎たちの怪我はあっという間に治り、私は彼の頭から手を離した。


「なん…で…、妹さまは神気を…?」
審神者は霊力を使い、審神者としての使命を全うする。しかし神気は文字通り神のちから。神のちからを人間である私が使う事ができて、どうして飲み込まれず、このような膨大な力を扱えるのか。
審神者の中でも神気を使えるものも居るらしいが、ごく一部だと言う。
自分でも何故こんな力があるのかは知らないが、先祖がすごかったのかな??とかそういう単純な考えしか浮かばない。

私はシッと人差し指を口元に持っていく。

「五虎退くん、これは内緒ね?私とあなたのひみつ」

「ひみつ…妹さまと僕の。わ、わかりました!」
ありがとうございます。と、とても嬉しそうな顔で微笑んでくれた五虎退くんにキュン死しそう。

「あーでも一期さんとか探してそうだよね…五虎退くん一緒に言い訳考えてよー」

「言い訳…ですか、あ…う、えぇと、どうしましょう?」
困ったように笑った五虎退くんに私も苦笑した。


「妹さまの笑った顔…初めてみた気がします…」

「え…?そうだっけ…あー確かにそうかも」
なるべく刀剣たちとは距離を置きたかったから無愛想なフリをしていたのだ。元はツボが浅くてテレビのお笑いとかみて大爆笑してるような馬鹿なのだけれど…この本丸に来て何回か吹き出しそうになったことはあるけれど、全く他の人と会話してなかったせいか、笑うこともあまりなくなった。
本当は笑いたいよ、うん。もう五虎退くんには私の気持ち悪い笑顔振りまいちゃおう。うん。


「はは、そんなにまじまじと顔見られると照れちゃうね。それとも私の顔に何かついてる?さっきお菓子つまみ食いしたから食べカスとかついてたらすっごい恥ずかしいんだけど」

「あ…ごめんなさいっ!で、でも…皆妹さまは無表情で怖いって聞いてたので…その、…全然そんな風には見えなくて…」

「そっかそっか」
五虎退の頭を撫でくりまわしながら、ははははと笑った。何も装わないでこうして喋ることが久々でつい嬉しくなってしまった。

しかし、私は無表情で怖いって印象で定着してるのか…いいな、その方が助かるんだが。
私、五虎退くんとお話出来れば生きれる…生きてられる気がする!!!


「あ、あのっ…」
容赦なく頭を撫でくりまわしていると、赤面した五虎退くんは上目遣い+涙目で私を見てきた。何その破壊力のある攻撃は!!!めちゃくちゃ可愛い!!!
とはいえ、あまりにも撫でくりまわしているので嫌になったんだろう。うん、ごめんよ。おばあちゃん小さい子見るとすぐ撫でたくなっちゃうから…

「ごめんね、撫でられるの嫌だったでしょ?」

「え…いや…その、もっと…撫でて、ほしいです…あ、ごめんなさい!我儘言ってごめんなさいっ」

「!?」
何なんだこの子は!!!私を試しているのか!?試しているんだな!?私を萌え殺そうとしているんだな!?何て恐ろしい子なんだ!!

そんな事を思いながら私はすっかり緩んでいる頬を戻すことを忘れ、五虎退くんや、近くによってすりすりと頭を擦り付けてくる虎達を撫でながらたくさんお話しをした。