13 仮面
家の中に案内された私は私の家の二倍以上はあるだろうリビングのソファーで座っているように促された。
こんなに広いと空き部屋をくださいと言いたい衝動に駆られる。しかし空き部屋を一つ貰ったとしても家賃は絶対に払えない額になるだろう。彼はどうすればそんな大金を貰えるような仕事につけるのだろうか…これは聞かないほうがいいだろうな。きっと命がけの仕事なのだろう。リスクが伴う分、額も跳ね上がるに決まっている。
コーヒーと紅茶どっちがいい?と言われたので紅茶とお願いした。コーヒーは別に嫌いではないが今は紅茶で落ち着きたい気分だ。
ソファーで座っているようにとは言われたが、やはり人間と言うものはわかりやすい生き物で、当然というように周りの物が気になるので私は探索を始めた。別に怪しい物があるだとかピサロさんの事をもっと知りたいだとかそういう事を思っているわけではない。単純に、金持ちの家ってどんなのだ?というバカな思考で探索している。問題ない。
ほう?これは…?
豪華なラックの上に置かれていたのはピサロと他の人達が写っている写真。
ピサロさんは普通の笑顔を浮かべていて、横には赤髪の目つきが悪い男の人や修道服を来た青髪の女の人、子どもたちが写っていたり、大人しめな水色の髪をした女の子が写っていたりしている。
幸せそうだな。と思った。
今のピサロさんが私に向けている笑顔というのは仮面をしている。口はにっこりと弧を描いていても目は驚くほどに冷たいのだ。私はこういう類の人間はあまり好きではない。かと言って安心したらすぐ仮面を取って全てをさらけ出すような間抜けも好きじゃない。まあ、それは私の事なのだが。
面白くないのならおもちゃなんてすぐ捨てればいいのに…というのがピサロさんに言いたいこと。別に死にたがりなんかではなく、何故わざわざおもちゃなんて作るのか。何故そんなにつまらなそうな顔をしているのか、私には理解出来なかった。彼には心の奥底にとんでもないものを抱えている…というのは私の直感だがそう思った。
私はよく、読めないような表情してるよねなんて言われるけど、ピサロさんだって全然読めない。私は少し人の心情だとか表情が人並みより優れているだけでそれだけだ。
この写真を見て、この人は笑うときは笑うんだって。まあ、それだけでいいかな。本当に笑えないならまだしも、こういった表情が出来るのなら人間って事だ。
今のピサロさんは人間らしいところが全然なかったから、余計怖かった。少し恐怖が収まったような気がする…と私はソファーに座り直した。
漁るような事はしない。常識的にも問われる行為であるし、見つかった時が何より恐ろしい。