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「内容は?」
「あひゃひゃ、ボクはやるかやらないか聞いてるんだよォ?そんなの引き受けてくれた後に話すヨ」
ズルい。
そんなのやらなければならないに決まってるじゃないか。
きっとこの男は私がこの案を断ったら殺すつもりだろう。だったらここで死んだほうが楽なんじゃない?と軽い発言と共に斬り掛かってきそうだ。
「本当にズルいですね」
「ズルい?優しいの間違いじゃなァい?ボクは何もメリットもないキミにわざわざ選択肢を与えてあげているんだから」
命の恩人だと思ってよォ〜と愉快そうに笑う目の前の男にイラッときたのは言うまでもないが。
「やりますよ、貴方の玩具になってあげますよ!どうせ断れば殺されることは目に見えてるんだから」
「へェ、案外バカだと思ったら賢いんだねェキミ。そうだヨ、つまらないものはイラナイ。人間ってさァ、かんたァ〜んに死んじゃうんだよ…?おかしいよねェ」
私は貴方の頭がおかしいと思うんだけどね。
これは単なる凡人の考えであって、彼らと私の思考は根本的に何かが違っているんだろう。
彼らはそれが”普通”で私はそれが”異常”。環境が違うだけで人間はこれだけ違ってくるものなのだ。本当に恐ろしい。
彼は完全に私を人間ではなく、”おもちゃ”として見ている。ならば自らなってやろうじゃないか、どうせいつかは捨てられるのなら壊れてから後悔するような傑作なおもちゃになってあげよう。
「自分から玩具になるだなんて、キミ変わってるねェ。もしかしてドM?」
「ドMなんかじゃないですよ。案外、利口な選択をしたと思いません?」
「あひゃひゃ、面白いじゃん!蛇穴が面白がってた理由がわかったかもォ!いいよ、おいで?こっちだから」
そう言って新しいおもちゃを手に入れてご機嫌なように、スキップをしながら歩き始めた。
そして、あーと突然声を上げてピタリと足を止めるとゆっくりとこちらを振り返って優雅にお辞儀しながら言った。
「申し遅れたねェ、ボクはピサロ=ジョーカー。よろしくネ、凡人サン」
帽子を胸に当てて綺麗な白髪を靡かせる。彼の深い闇のような瞳は宵闇に映え、妖艶な笑みを浮かべて私を見たのだ。
少しでもカッコいいと思った私は自重するべきなのだと思う。