ガサガサと買い物袋を揺らし夜道を歩く、隣にはバーテン服ではない普段着の池袋最強。
見る人が見ればぎょっとしそうな光景、それが二人の日常になったのはいつからだろう。
池袋で会えば喧嘩と言う名の殺し合いをするのは学生時代と何一つ変わらないが、お互いに力加減を覚えたおかげでぐんと新羅に頼りに行く回数も減った。
昼間はじゃれるように喧嘩をし、お互いの仕事が終わればどちらかの家で夜を過ごす。
それが今の二人の日常なのである。
「シズちゃん、明日仕事何時から?」
「あー、明日は休みになった。トムさんが後輩に仕事教えるとかで、俺は休んで良いって。」
「ふうん…そっか、俺も明日は外に出る用事はないんだ。」
だからどうだ、とも言わず袋を持っていない方の手を差し出せば自然な流れでその手が握られる。
外の気温のせいで冷えた指先を包む温もりに緩くその腕を振り、揺らしてみた。
「じゃあ帰ったらビール飲もう、ビール。」
「てめぇ、俺がビール飲まないの知ってんだろ。」
「勿論知ってるし、君が自分用に甘そうな缶酎ハイを買ったのも知ってるから。」
繋いでいない手に持たれた重たそうな袋を指差しそう指摘すれば、拗ねた子供のような表情でフイとそっぽを向かれる。
「…どうせまた子供舌とか言ってからかうんだろ、バカにしやがって。」
からかうと言うより構いたいだけなのだが、彼はそれがお気に召さないらしい。
折角、明日は二人でのんびりと過ごせそうなのに拗ねられたままでは流石につまらない。と、言うか寂しい。
「ごめんごめん、バカにしたりしないしからかったりもしないから、ね?」
ぎゅ、と繋いだ手に力を込めて謝れば仕方ない、とでも言うかのように指を絡められ、握り直される。
「じゃあ帰ったら呑むか、んで明日はのんびり過ごそうぜ。」
「賛成ー。シズちゃんとゆっくり過ごせるの久々だし嬉しいなあ。」
ユラユラと繋いだ手を振り動かしながらぽろりと零してしまった本音、
最早、第二の自宅となってしまった家まであと数メートルの距離、
切れかれた街灯の下でぐいと腕を引かれ半ば強引に触れ合った唇、
「何、可愛いこと言ってんだバカ。」
「何してんだバカ。」
「てめぇが可愛いこと言うからだろバカ。」
「本当、バカなんじゃないのバカ。」
バカ、バカ、と罵り合いながらも繋いだ手は離さずにカンカンと足音を響かせ階段を上っていく。
ようやく離したのは部屋の前、ドアの鍵を開けるために離れた温もりが少しだけ恋しくなる。
ガチャリ、と音を立て開いたドアを閉めたら今度はこちらからキスしてやろう。
そんなことを思いつつ部屋へと上がる彼に続いて狭い玄関に足を進めた。