何にも知らない、分からない、言わば真っ白な世界にソレは突然飛び込んで来た。
白とピンク、それに黒で構成されたソレ。どうやら自分と同じモノらしい。

「だれ?」

綺麗な、ハッキリとした音が世界に響く。

「話せないの?ねえ、」

何も言わないこちらに不安そうに眉を寄せずい、と顔を近付けてくる。
大きなピンク色の瞳、くりくりとしたそれがじっとこちらを見つめる。

「ねえ、だれ?サイケ、言ってもらえないとわかんないよ。」

どうやらこの子の名前は『サイケ』らしい。

「サイケ?」

初めて聞いた音を口に出せば目の前のその子はパッと表情を明るくして何度も首を縦に振る。

「うん、サイケだよ!話せるんだね、良かったぁ…せっかく会えたのにしゃべれなかったらつまらないもん。」

ニコニコとしながら喋る姿に思わず手が伸び、頭を撫でてしまった。
柔らかな髪が指先を通る感触の心地よさに目を細めていると、僅かに羽織りの裾を引かれる。
下を向けば頭に触れられている事を気にも留めていない様子の彼。

「ねえ、名前はなに?君はだれなの?」

ずっと繰り返し聞かれる質問に僅かに腰を屈め、視線を合わせて口を開いた。

「俺の名前は、津軽。」

「つがる!よろしくね、つがる!」

嬉しそうにつむがれる自分の名前にドキリ、と胸が震えた気がした。

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