(静×臨+津・サイ)
※津軽とサイケは外見6、7歳くらい。




『とりっくおあとりーと!』

ドアを開けたと同時に聞こえた二人分の声。
そして普段では考えられないような格好の二人。

「は?」

俺の反応は正常だったと思う。

「やだなぁ、シズちゃん。今日はハロウィンじゃないか。だからホラ、二人にお菓子あげないと悪戯されちゃうよ?」

そんな二人の後ろから顔を出した、これまたいつもと違う格好をした人物をとりあえず殴ってやろうかと思ったが、ひとまず狭いこの部屋にその三人を引きずるように招き入れた。
ご近所さんに見られたら明日から気まずい生活を送るはめになりそうだから、なんて理由はこの三人には決して伝わらないだろう。

「よし、とりあえず殴らせろ。」

部屋に入り即、拳を握り締めたまま真顔で言えば顔を引きつらせ、自分よりも小さな二人を盾にするように後ろへと隠れる。

「シズオ、とりっくおあとりーと!」

そんな空気の中再び言われた台詞。
言った本人はピンク色の瞳を何か期待するように輝かせている。
ちなみにその隣の俺にそっくりな顔をした小さないのも何も言わないが、何かを期待しているらしい視線を送ってくる。

「あー…ちょっと待ってろ。」

仕方なくポンポン、とその二人の頭を撫で、あるかどうかも分からないお菓子を探しに台所へと向かう。

「予想外だなぁ、シズちゃんはお菓子とか持ってないと思って来たのに。」

後ろをくっ付いて来た男の言葉に睨むような視線を送るが、全く気にしていない様子でニッコリと微笑まれる。

「あ、これすごい?ドラキュラなんだけどさぁ、狩沢が似合いそうって言ってくれたんだよね。ちなみにあの二人のも作ってくれたんだよ、可愛くない?」

そう言いながらヒラリと翻される黒いマント。中は黒いパンツにベスト、白いシャツ。それに首もとには同じく白いタイが巻かれている。

「ほら、犬歯もきちんとあるんだよ。」

いー、と自分の口の端を引っ張り普段よりも尖ったそれを見せられる。

「アイツ等は確かに可愛いが、…手前はいつにも増してウゼェ。」

正直に言えば大袈裟に肩を竦める吸血鬼。絵になってはいるが、ものすごくウザい。

それを無視して台所をあさっていると、先日トムさんがくれたチョコが出てきた。
それを片手に2人が待つリビングへ向かおうとするがぐい、と強く腕を引かれる。
その力に従って振り向くと唐突に首筋へと寄せられる唇、更にチクリと走る微かな痛み。

「、ってえなぁ…何やってんだよ、手前は…。」

作り物の牙を首に突き立ててくる相手に眉を寄せ睨むような視線を送れば、目の前には子供のように拗ねた顔を見せる吸血鬼。

「…シズちゃん、俺もTrick or Treat!」

半ばやけくそのように向けられたセリフに思わず吹き出してしまえば、今度はこちらが睨まれる。

「そうだな…もうアイツ等にやる分しかない、って言ったらどうすんだ?」

ニヤニヤと、意地悪く笑ってやれば悔しそうに眉を寄せ真っ赤になりながら回された二本の腕。

「…悪戯、するだけだよ。」

真っ赤になった顔を隠すためだろうが、しがみつくように抱きつきながら小さく呟く相手の可愛さにますます緩んでしまいそうになる頬に力を入れ
耳元に唇を寄せてわざと低く聞き返す。

「悪戯って何するんだ?ほら、教えてくれよ。」

息を吹きかけるように言葉をかければビクリと震える細い身体。
そんな相手の肩を抱き、ゆっくりと顔を近付けていく。
まぶたが伏せられ、唇が触れ合う、本当に直前

「シズオ、まだー?」

ヒョコ、と覗いた二つの頭。
その声が聞こえた瞬間、ありえないくらいの力で身体を引き離された。

「ち、チョコあったってさ。良かったね、サイケ、津軽。」

「オイ、臨也、」

ぎこちない笑みを浮かべながら二人に近付こうとした相手の肩に手を置き呼び止め
コソリ、と言葉を囁けば耳元まで真っ赤に染め上げその場で固まる吸血鬼。
そんな奴を台所に残したまま手にしたチョコを手渡しに二人の元へと戻った。


(――悪戯するかされるか選ばせてやるよ、とかバカだろ。お菓子寄越せよシズちゃんのアホ。)


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きっと悪戯してもされても結果は一緒だよ!
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