(短いです。)
夜中、ふと目を覚ますと目の前には綺麗に整った顔。
普段から見慣れているはずのその顔に不覚にもときめいてしまった、なんて。
見慣れている、向けられる表情の多くは怒りや呆れ、蔑みで、こんな穏やかな表情は滅多に見れない。
そんな珍しい表情をもう少し見ていたいような、壊してしまいたいような、グラグラと揺れる気持ちを押さえながら
何となく、本当に何となく、そっと目の前の人物に手を伸ばした。
鼻、目元、頬、顎、唇と指先を滑らせ、その形を確かめるように柔らかく触れる。
温かく柔らかな感触に、ああ、シズちゃんも人間なんだな。とか当たり前のことを考えていると僅かに寄せられる眉。
目の前で揺れる金髪に、慌てて伸ばしていた指先を自分の手でで握り込み跳ねた心臓押さえつける。
キュッと唇を結んでひたすらにじっとしていると再び規則正しい寝息が聞こえてきた。
「驚かせるなよ、バーカ。」
驚かされた仕返しに噛み付いてやろうかとも思ったが
穏やかな寝顔を見たらそんなこと出来るはずもなく。
小さく、起こさないように文句を口にしながら鼻先に唇を軽く触れさせるだけに留めておいた。
「おやすみ、シズちゃん。」
まぶたを閉じて小さく呟いた言葉に、背中へと回されていた腕の力が
少しだけ、強くなった気がした。