(静←臨前提の臨+サイ)





余計な音を覚えたらいけないよ、そう言ってオレを作った人はオレの瞳と同じ色のヘッドホンを耳にかけてくれた。

誰が、いつ、何の目的でオレを作ったのか。
そんなこと知らないし知る必要もない、本気でそう思っている。
今、こうして同じ顔をしたゴシュジンサマが一緒に居てくれる。それだけでオレは幸せだから。

「イザヤー、サイケ、お腹空いた。」

基本的にイザヤは無口、と言うかあまり余計なことは話さない。
オレがねだるようにアレをして欲しい、コレをして欲しいと言えば少しだけ口の端を上げて笑ってくれる。
そのあとわかったよ。って綺麗な声で返事をしてくれる、その声がオレは大好きだった。

「分かったよ、じゃあ何か食べようか。」

同じ顔なはずなのにイザヤはすごく綺麗に笑う、前に鏡の前で同じように笑ってみたけど、どこかが違った。

「サイケ、今日はパスタが良いなぁ。」

キッチンに向かうイザヤの後にくっ付いて歩きながら注文とすれば良いよ、と一言。
オレが何を言っても大抵は聞いてくれる。イザヤはオレにとってカミサマよりもすごい存在なんじゃないかなぁ、と最近は思う。
でもそんなイザヤが違う表情を見せる時がある。
シズオの話になると普段は見せないような顔でオレを見つめてくるんだ。
秘書のナミエさんが言うにはイザヤはシズオが大好きで大嫌いなんだって言われた。
オレにはそれが分からなくて聞き返したら、分からないならイザヤに直接聞きなさいって言われた。

「ねえ、イザヤ。イザヤはシズオのこと好きなの?嫌いなの?」

調理を始めていたイザヤの隣に立ちじっと顔を見つめながらナミエさんに言われた通りに尋ねると、イザヤはくしゃって泣きそうな顔で笑った。

「…大嫌いだよ、あんな奴。」

そう言うイザヤの声は、あんまり綺麗な音じゃなくて、オレは何の音楽も流れていないヘッドホンを両手で押さえ付けた。

あの人の言う通り、余計な音なんて聞きたくない。
初めてそう思ったのは大好きなイザヤの声。
オレの耳は、その音を、拒んだ。


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嘘を吐く声が嫌いなサイケ。
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