(自販機の補充員(?)静雄×大学生臨也)




ガシャンガシャン、と音を立てながら少なくなっていた缶を補充していく。
後ろを通る学生にこんにちはーなんて声をかけられながら。
ちわー、と顔も見ずに適当に返事を返しているとその生ぬるいような空気を壊す綺麗な声。

「お疲れさま。」

かけられた声に後ろを振り向けば、黒をまとった細身の男が立っていた。

「最近よく会うね、平和島…さん?」

ニコリ、とどこか胡散臭そうな、整った笑みを向けてくるコイツはどうやらここの学生らしい。
前にも何度か声をかけられていたが、顔を覚えているならまだしも名前を知っているとは思わなかった。
そんな驚きが顔に出ていたのかその綺麗な笑みが崩れ、笑い声を堪えるように口元に手があてがわれ、肩が震える。

「何で名前を知ってるんだ、って顔してるよ?」

分かりやす過ぎる自分の態度と相手のおかしそうに笑う姿に気恥ずかしくなり、眉を寄せ睨むように見つめればごめんね、と素直に謝られた。

「君くらい容姿が整ってればみんな気になるよ、名前や年齢、彼女の有無。その手の話はすぐに広まるから…」

ソイツがチラリと外した視線を追ってそちらを振り向くと、数人で固まっていた女の子にキャアと甲高い声を上げられる。
コイツの方がよっぽどモテそうなもんだけど。

「だから知ってるってわけ、不思議でも何でもないだろ?」

「…まぁ、そう言われたらそうだな。」

言葉に簡単に頷きながら止まっていた手を動かし補充を済ませる。
自販機に鍵をかけダンボールを積んだ荷台に手をかけるとスイ、と近付いてきたソイツに下から顔を覗き込まれた。
あぁ、綺麗な顔してんだな。と思ったのもつかの間、いつの間にか縮まった距離。唇に触れた柔らかな感触に俺の思考は完全に停止した。

「俺も君に興味を持った人間の一人だって覚えておいてよ、シズちゃん?」

「はぁあ?!シズちゃんだぁ?」

「そう、君のことだよ。俺は折原臨也、名前くらいは覚えてよ?シーズちゃん。」

ふざけた呼び方は止めろ、そう言おうとした俺に悪戯っこのような笑みを向けて更に言葉を重ねる。

「ちなみに、さっき言ったのは半分嘘で半分本当。俺が気になったから名前とか調べちゃった、ごめんね?…と、呼ばれてるみたいだからまたねー。」

一方的にそう言うと後ろから呼ばれた名前に返事をしてアッサリと目の前からいなくなってしまった。

ふざけた呼び名と胡散臭い笑顔、それに綺麗な声と顔…と唇の感触。

「忘れたくても忘れられるかっつーの。」

次にこの学校に来るのは明後日。その時にはこちらから声をかけてやろう、そう決めて先輩が待っているであろう車に急いで荷台を押して走った。


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誰得だって言うね。お粗末。

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