風の通り道 | ナノ



夢の中で

それは、いつかの自分であり。涙ぐむ子供であり。幼い心だった。




《もうヤだよ》
《疲れたよ》

《期待は応えられなくて》
《人の視線は恐くって》
《人の評価が怖くって》


《どこまで頑張ればいいの?》
《爪先立ちで、平静を作って、笑って、心ごまかして》





『どうしたら、認めて貰えるの?』


血溜まりに膝をつく、髪の短い自分は。歪な微笑みを湛えていた。
笑ってるのに、泣いていた。



『認めて欲しい。期待に応えたい。求めて欲しい』

『いいこでいたい。いいこになりたい』


『色んな事が出来るんだ。出来るように頑張ったんだ』


『人の嫌な事は言わないように飲み込んで』
『ねぇ。それはとても気持ち悪い事だけど』
『我慢する自分も。耐える自分も好きなんだ』
『だからこれはつらくない事なんだ』
『だから。だから。ねぇ……ねぇ!!!』


手をちからいっぱい伸ばす自分は、
それでも空には届かない。





当たり前だ。
だって俺は。
この水面に投げ込まれた言葉達を。沈没船の財宝のように、沈めてしまってた。

手に取るのが怖かった。
いつか、自分が応えられなくなるのが、怖かった。
自分の物にしたつもりの言葉が、泡のように消えてしまわないか、怖かったんだ。




それでも。雪のように、雨のように。
温かく、それが降ってくるから。


「俺」が認めてやれない《俺》も、『俺』にも。分け隔てなく。

降ってくるものを知ってるから。





俺は、赦しても良いのかもしれない。

俺が、俺を、認める事を。

そのままで良いって、赦す事を。



誰よりも抱き締められたかったのは、俺で。
誰よりも赦されたかったのも、俺。


くすぐったくも、嬉しい言葉はたくさん……たくさん今まで、向けて貰っているのだから。




――――声が、聞こえた気がした。



……起きないと。

伝えたい人がいる。
伝えたい事がある。

貧血なら、起きてても治る。








とりあえず、そう。
林檎はうさぎさんで。

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2013/11/25 (03:36)


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