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あの喧嘩から数日がたった。向こうの世界に戻るかもしれない日まで残り1週間もない。

二日目の戦闘で負った肩の傷は塞がり、まだ痛みは多少あるが、ある程度動かせるようになった。あの日から、ローとはギクシャクすることはなく、むしろローの意外な一面を見ることが出来て嬉しく思っている。時々、椅子から落ちたローの顔を思い出しては笑ってしまい、ローが頬を膨らますことがあるが、そんなローも可愛くて仕方がない。
二日間の昏睡から目が覚めて戻ったローの部屋で、ローと休んでいると、船内が俄に騒がしくなったように感じた。続いて聞こえたノックの音にローが返事をする。入ってきたのはペンギンで、男性の膝を枕に本を読んでいたローを一瞥し、溜め息をつきながらも島が見えたことを報告してきた。
「見たところ、無人島ではないようです。」
無人島ではないということは、人がいて街があるという事か。無人島でも有人島でも、男性にとってはこの世界に来て初めての島であることに変わりはないが、有人島の方が楽しみは倍増する。
「ロー!島だって!」
楽しげな男性の声にローは読書を中断する。気怠げに起き上がり、男性の横に座り直した。
「行きてぇか?」
「まあ……初めての島だし、あと久し振りの陸だし。」
久し振りといってもこちらの世界に来てまだ1週間も経っていない。ローも同じ事を思ったようで、そんなに久し振りじゃねぇだろと息をつく。しかし、このところ景色は殆ど同じだし、偶には違う景色も見たいし、どうせならこの世界を楽しみたい。大怪我をしたせいで、散々な思い出しかない。怪我をしたのはペンギンを守るための自業自得だし、決して良くない思い出ばかりでもないが。
渋い顔をしているローに、だめ?と首を傾げると、再度息をついて、おれから離れるなと言ってきた。どうやら許可が降りたらしい。
「やった!ロー、ありがとう!あ、ペンギンも一緒に行こう!あと、ベポとシャチも!」
男性は矢継ぎ早にそう告げると、パタパタと甲板へ向かう。
「……二人きりが良かったですか?」
「いや、いい。」
男性が去った船長室では、この世界に戻って初めてのデートだと思っていたローと、ローに気を遣うペンギンが残された。


「シャチ、ベポ!」
「お、男性じゃねぇか!肩はどうだ?」
「まだ痛いけど、結構動かせるよ!ねぇ、島に着くんでしょ?一緒にまわろう?」
甲板に出ると大体のクルーは集まっているようだった。島は肉眼で見えるほどに近づいていた。
「いいよー!おれも男性とまわりたいと思ってたんだ!」
ベポが肩を気遣いながら抱き着いてくる。相変わらずフワフワで毛並みが良い。シャチも乗り気なようだ。今更に感じる異世界というわくわく感に身体が震える。早く上陸したくて仕方が無いのだ。




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