朝、ぼんやりとした意識の中、ぎゅっと身体が包み込まれ温かい体温と心音を感じ
再び眠りの中へと引き戻される。
柔らかくて温かい感触が瞼から鼻筋、頬そして唇へと落とされ
静かに大きな手が頭を撫でて長くしなやかな指が髪を梳くのを感じる。
そっと頬に手を添えられ親指がなぞった後、ベッドから起き上がった音が静かに響く。
瞼を開けようと思ったが、心地良さがもう少し...と微睡の中に留まらせる。
「休みの日の朝はゆっくりできる」とは言いつつも、起きて行動する時間は殆ど変らない。
でもきっと、彼の中ではいつもとは違う時間の流れなのだろう。
薄らと奥の方から水が流れる音と冷蔵庫が開閉する音が聞こえる。
そのまま二度寝してしまい、もう一度意識が呼び戻されかけた時にはこめかみに唇が触れた感触がした。
「おはよう、name」
ゆっくりと瞼を開ければ、穏やかな笑顔を浮かべて見つめる瞳と絡み合う。
「朝食が出来た。冷めないうちに食べようか」
そう言ってから軽く唇を食むようなキスをされて、ほんのりとコーヒーの香りがした。
「イグニス、コーヒーもう飲んだでしょ」
「あぁ、作りながら眠気冷ましに飲んだな。すまない、苦かったか」
「ううん、良い香り。目が覚めるね」
そんなやり取りをしていると、イグニスのスマートフォンが鳴り響く。
「...王子様からのモーニングコールだね」
やれやれ、といった感じにスマートフォンを手に取ろうとしたイグニスにもう一度強請るように両腕を伸ばした。
「目が覚める様に、もう一度ちょうだい」
「困ったお姫様がここにもひとり..か」
そう言いながら笑い、もう一度柔らかくて甘い口づけをくれた。
もっとほしいの