風呂上がり
寒くなるこの季節のパジャマの肌触りが好きだ。
暖かくてふかふかとしている。
やさしい肌あたりと保温性があるウールの靴下にムートンのルームシューズを履いてリビングの窓辺に椅子を持ってきて座っていた。
髪にはバスタオルを巻いたままだ。
「またそんな格好のまま…」
やってきた七海さんは少し眉間に皺を寄せた。
「部屋も暖かいし、冬用の靴下にパジャマにルームシューズ…寒くはないよ」
「濡れたままだと頭皮にも良くないですよ」
「海外出身のモデルさんが自然乾燥するって動画で言ってたよ」
「その方はその方、あなたはあなたです」
「頭寒足熱って言うし」
「使い方が違うでしょう」
どうしても髪を乾かすのが億劫になってしまい、タオルを巻いたまま適度に乾いたらやりたくなる。
重い腰を上げてバスルームへ行こうとしたところ七海さんが制止した。
「ちょっと待っててください」
言われた通り椅子にまた座り、少しでも早く乾くようにタオルで髪を揉んでみた。
「乾かしますよ」
戻ってきた七海さんはドライヤーを持ってきていた。
暖かい風が吹いて、彼の大きな手が私の頭に触れて優しく行き来する。
気持ちが良くて眠ってしまいそうだった。
「毛が細く柔らかいですね」
乾かし終えてドライヤーを切り
七海さんは私の髪の毛を指で梳いた。
「そうかな?」
「艶もあって綺麗ですよ」
椅子から立ち上がって、今度は七海さんに座ってもらいその上に乗った。
彼の首に腕を絡めて胸元に顔を寄せて目を瞑った。
「建人さん、デンマーク語何か話して」
「突然ですね」
「うん。建人さんの声で聞きたい」
「Jeg er vild med dig. 」
「どんな意味?」
「…後で調べてみて下さい」
彼の唇が瞼に触れ、耳に触れ、首に触れ
甘噛みされた後に吸い付く感触がした。
湿った舌が強めに首に押し当てられて緩やかに上下する。
「ふふっ…」
「嫌だったら止めます」
そう言いつつ私を抱き締めている腕とは反対の手が、裾から服の中に入り直に背中を撫でて
胸の膨らみを包み込むように上へと押し上げた。
「嫌じゃないよ、」
ーもっとたくさん触って。
彼の耳元で小さな声で伝えると、私を抱き抱えたまま立ち上がった。
「建人さんお風呂まだだったね」
「後でまた一緒に入りましょうか」
温かな彼の肌を感じる中
私は何度も何度も彼にキスを強請った。
緩やかに腰を動かしながら
喉仏から顎のラインを舌でなぞり唇へと辿り着いた後
先ほどよりも息が苦しくなるくらいのキスを彼はしてくれた。
舌先を絡めたままで果てて欲しいと思ったけど
先にそうなったのは私の方だった。
お風呂に一緒に入ったのは、早めに起きた翌朝。
そして七海さんが言った言葉を調べるのはすっかり頭から抜けてしまった。
ーJeg er vild med dig.
私はあなたに夢中です