ルーファウスは本社へと戻り、自身専用の部屋へと向かった。
数年に及ぶ長期出張という名の軟禁も終わりミッドガルヘと戻った。
神羅にとっての利益をもたらす共同運営を祝っての祝賀会が行われる。
父親のやり方は金のかかるやり方だと常々感じてはいたが、今回の祝賀会は珍しく友好的で平和的解決だ。
各国を代表する多くの企業トップも集まるとなれば、まだ『副社長』という肩書ではあっても顔を覚えさせることは今後の為にもなる。
自分を呼び戻したのはその顔ぶれ達の話し相手でもしていろ、という意味合いが込められているのかもしれない。
もしそうだとしたら笑いが止まらない。
全くもって自分が思った通りのことをする父親に対しての笑いだ。
「悪いな親父。社長の椅子から引きずり降ろす時が来た」
自室から眼下に広がるミッドガルを見下ろし、ルーファウスは呟いた。
タークスとの絆がより強固に確実なものとなった“事件”により軟禁生活を強いられることにはなったが、ルーファウスは自分の思い描く理想郷は決して諦めていない。
寧ろこの数年のおかげで自分が社長の座に就くのもそう遠くないという確信さえ持てている。
デスクへと向かいパソコンから住民データを呼び起こす。
ツォンからの報告通りのデータがそこにはあった。
―ミカル・セルブライト
唯一の血縁者であった叔母のデータを読み込む。
ユアン・セルブライト
まだ自分は10代前半だったか・・ある特殊部隊を吸収するという話を思い出した。
現ソルジャー制度が出来る前だったか丁度出来た時だったか。
その部隊は表向きは警備部隊となってはいたが、各国要人・企業からの依頼によるミッションを完璧にかつ速やかにこなすという
所謂エリート兵の集団だった。
ミッションの殆どが不可能に近いと思える事が多い。
父親がその集団が自分の傘下になることを『やっと手に入れた』と言わんばかりに喜んでいたのが印象的だった。
そのエリートたちを統率しチームリーダーとして活躍していたのがミカルの叔母であるユアン。
ルーファウスはその写真を見て、幼い頃の記憶の中に薄らと残像がある気がした。
詳細不明となっているが、コスモキャニオン―ユアンとミカルの本籍―にて没となっている。
各国で買い付けてきたものを売っていると言ってたのを思い出し、旅の途中での不慮の事故だろうかとも思った。
だとしたら、今ミカルは一人で暮らしているのだろうか。
親族にあたるもののデータは見つからない。
ふと閃いたように、ルーファウスは重役とタークスの限られたメンバーだけがアクセスできる社内重要機密ページへとアクセスした。
ユアンの名前を入力すると詳細が出てきて、関連項目にもう一人女性副隊長の名前が出てきた。
住民データベースにその名前を入力すると顔写真と共に現在の居住地と職種内容も出てきた。
それを見たルーファウスは成程、と言う代わりに小さく鼻で笑った。
タブレットをタップすると呼び出し音が数回鳴り、声を確認して短く任務を伝えた。
「ツォン。ミカルも保護対象に入れるように。」
『・・はっ。』
通話を切った後、再びルーファウスはディスプレイに目を向け情報を読み込んだ。