鳴門 | ナノ
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64.例えばからはじまるお話


「─────どうやらあの娘は連れ戻せなかったようじゃのう。じゃが、暁を相手取って犠牲を出さなかったとは大したもんじゃ」
「チヨバア様、もったい振ってないで教えてくれよ。人繋ぎってのは一体何なんだ?」

いくら同盟国とは言え風影の我愛羅、護衛役のテマリやカンクロウ、何より隠居した身のチヨバア様がわざわざ木ノ葉まで足を運んだのは俺達の疑問に答えるためだろう。シカマルだけじゃなく俺だって、この場にいる誰もが何よりも聞きたいことなのだから。

「ウム……何と言ったら良いものか、昔は"繋ぎの一族"やら"繋ぎの者"とも呼ばれとったが。今、多くの者が知るのは"人繋ぎ"と言う呼び方じゃろうな」
「ちょっと待ってくれ。そんな一族、聞いたことねーぞ?」
「お前達が思う"一族"と"繋ぎの一族"は全くの別ものじゃ。繋ぎの一族とは、この世の誰もがその存在になり得る可能性を秘めておる」

組んだ手の下で五代目の口元が弧を描いたのが見えた。なるほど、てっきり五代目や自来也様も人繋ぎについて知っているものだと思っていたがチヨバア様ほど詳しく知っているわけじゃないと言うことか。何せ、この人は里と言う枠組みを超えた独自のパイプを持っているのだから。

「どう言うことだってばよ?」
「この世のどこかで生まれ、育ち、それまでは周りと何一つ変わらぬ……じゃが、いつからか新たな自我が芽生えて初めて"繋ぎのもの"と言う存在になるんじゃよ。そして、その者が寿命を迎えるとまたどこかで次の繋ぎのものが誕生する」

人繋ぎは転生を繰り返すから存在自体は常にたった一人。そして今はなまえがそれと言うことか。

「それに、あの娘が繋ぎの者なら暁に身を置きながらも我愛羅達を助けたことにも納得がいく」
「……何で?」
「あやつ等に敵、味方の区別はない。一族は皆、ある一つの意志に従っていると言われとるからじゃ」
「意志?」
「それが何なのかを語った者は今までにおらんがの……」
「もう一つ聞きたいことがある。チヨバア様は以前、この世はとうの昔に見限られたものだと思っていたと言っていたが……あれはどう言う意味なんだ?」
「ああ。一族の中には自我が芽生えることなく一生を終えたものも決して少なくない。それが続けば誰もが一度は考えるじゃろうて。この世は繋ぎの者が存在する価値すらなくなってしまったんじゃとな」

いくらチヨバア様でも今までの人繋ぎを全て把握していたわけじゃないのだろう。でも、だからと言って全く耳に入ってこないと言うのはあまりにも不自然で。俺達の倍以上生きてきたこの人なら尚更。そう考えてみると何年、何十年と同じことが続くうちにそう思い至るのも当然と言えば当然なのかもしれない。

「なぜ長きに渡って鳴りを潜めていた一族が今になって再び動き出したのかはわしにも分からんが、お前達があくまであの娘を追い続けると言うのなら生半可な覚悟では後悔することになるぞ」
「どう言うことだ?」
「今は分からなくてもいずれ嫌でも分かる。"繋ぎの一族"がこの世で最も悲しき一族であるとな」

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