鳴門 | ナノ
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51.砂糖漬けにして鑑賞


「何だ? この人柱力。完全に尾獣化してやがるぜ」

第六感を頼りに水中から自身を切り離して一気に浮上すると、大きな火の球が目の前を覆い尽くした。

(、うッ……)

ドオンッ、と宙に描かれた"守"の文字と火の球がぶつかり合い目の前で派手な音を立てながら蒸発する───危なかった。咄嗟に結界を張っていなければ間違いなく黒焦げになっていた。それにしてもあの結界で威力を殺しきれないなんて。シュゥゥゥ……と煙が上がる手の平がビリビリと痺れて痛い。

「オイオイ、来て早々ずいぶんと無茶するじゃねーか。なまえちゃんよォ」
「! 飛段さん、角都さんは?」
「さあな……その辺にいんじゃねーの? さっき思いっ切り猫パンチ食らって吹っ飛んでいったからな」

ククク、と飛段さんはニヒルな笑みを浮かべた。そう言えば、この二人は暁の中でも不死身コンビと言われているくらいには頑丈なんだっけ。特に慌てた様子もないし角都さんも無事なのだろう。勝手にそう結論づけると、絶えず火を吐きながら岩陰に隠れる私達を探す巨大な猫へ目を向けた。

「……あれが二尾ですか?」
「ああ。生霊と言われる二尾の化け猫だ。俺達は正しく袋の鼠ってわけだな……ククッ、笑えねー」
「……飛段さん。私が二尾のチャクラを抑え込みます。後のことは任せても良いですか?」

いくら不死身とは言ってもここまで広い範囲で攻撃され続ければ捕まえるのも一苦労だし、私の術なら人の姿に戻せるはずだ。ここまで強大なチャクラを縛るのは初めてだけれど試してみたいこともあるから丁度良い。

「へぇ……美味しいところくれるとは相変わらず太っ腹だな。良いぜ! 後のことは俺達に任せな!」
「はい!」

きっかけは九尾のチャクラを縛った時のこと。
サソリさんのお陰で使い勝手の良い術に変わったことは確かだけれど、課題はまだまだ山積みで。例えばより強大なチャクラはおそらく糸の形状では縛り切れない。二尾を糸で縛ろうとすれば押し負けてしまうだろう。だから考えたのだ。
飛雷神の術で二尾の背後に回り込んだ二体の影分身に合図を送れば、私と同じように何本もの糸を体から生み出していく。それが次から次へと編み込まれ、次第に一本の太い縄が作り上げられていく。糸で縛り切れないのならより丈夫な縄に変えれば良い。糸と比べて触れる面積が広がる分、練り込むチャクラの量は増えるし何本もの糸を編み込むから影分身の陽動が前提になるけれどその分の効果は期待出来るはずだ。

「縄縛りの術!」

両腕に熱を感じたと同時にメラメラと燃えていた二尾のチャクラが弾け飛んだ。





─────それからの展開は拍子抜けするくらい早かった。やっぱり飛段さんの呪いには誰も逆らうことが出来ないのだ。

「30分も経ってるぞ。まだか? 飛段」
「うるせーよ! 儀式の邪魔すんな!」
「毎度毎度のその悪趣味な祈り、少しは省略出来んのか? さっさと次へ行くぞ」
「俺だって面倒くせーけど戒律なんだからしょうがねーだろ。それに省略ってなんだ、省略って! 神への冒涜だぞ!」

二人の会話を聞きながら、ふと両手を握っては開くことを繰り返してみた。
あれからしばらく経つのにまだ指先から腕にかけての痺れが取れない。術自体の強度は増したけれどやっぱりその分の負担はどうしたって身体に返ってきてしまう。どうやらあまり多用して良いものではないらしい。

「……で、どうしてなまえがここにいる? 確かサソリ達と行動していたはずだろ」
「リーダーの指示です。トビさんがデイダラさんと組むことになったので代わりにお二人を手伝うようにと」
「何だって良いだろ。他の奴等ならともかく、なまえちゃんなら俺は大歓迎だ!」
「……それもそうだな。なまえの能力は役に立つ」
「フフッ。光栄です」

邪魔だからと突き返されるのではないかと不安に思っていたけれど、どうやら思い過ごしだったらしい。思いの外歓迎ムードの二人に密かに安堵の息を零した。

「ドウヤラ済ンダヨウダナ。長ッタラシイ儀式モオワッタカ」
「なまえも無事に合流出来て良かったね」
「! ゼツさん?」
「どいつもこいつもうるせー野郎だ。祈りを知らねー無神論者共が」
「悲しい時は身一つ」
「信ジラレルノハ己ダケダ」
「いや、違うな。信じられるのは金だけだ」
「あー出た、それ! お前のバイトのせいで人柱力探しが遅れてんだぜ。大体よー」
「宗教は金になると言ってきたからお前と組んだんだ。暁の財布役を任されてる俺の身にもなれ」
「まあまあ。何をするにも先立つものは必要ですし、角都さんの言い分も一理ありますよ。二尾も無事に捕獲出来たことですし良いじゃないですか。ね?」
「なまえの言ウ通リダ。下ラナイコトデ言イ争ッテナイデ、サッサト次ヲ探索シロ。二尾ハおれガ預カル」
「そうですね。角都さん、次はどこへ行くつもりですか?」
「ここからは虱つぶしだ……次はここからも近い火の国へ向かう」

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