鳴門 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
12.お前の後ろ姿が夕陽に焼けて眩しすぎた


「さてと、そろそろ解散にするか。俺はこれから任務の報告書を提出せにゃならん」
「なら、帰るぜ」

あ! サスケくん、待ってー! とすかさず駆け寄るサクラの声を聞きながら私も帰ろうかな、と誰に言うでもなく呟いた。
今日は休みだって言っていたから久しぶりに一緒にご飯を作って、そう言えばそろそろカボチャの煮物も褒めてもらえるようになりたいな。前に作った時は最早素材の味だな、なんて言われちゃったし。

「えらく上機嫌だな」
「! サスケ? サクラは良いの? 何か用事があったんじゃ……」
「フン。俺には関係ない」
「……そっか」
「で? お前の方は?」
「え? えっと……今日は久しぶりにお兄ちゃんが休みだから、帰っても一人じゃないことが嬉しくて」
「……兄貴なんていたのか?」
「うん。義理のお兄ちゃんなんだけどね」

我ながら子ども染みた理由だとは思いつつもありのままを話してみれば、サスケは鼻で笑うどころか眉一つ動かさずに先を促すものだから、つい言わなくて良いことまで打ち明けてしまった。とは言っても、別に隠していることでもないのだけれど。それでも言わない方が良かったと僅かな後悔を抱いてしまったのは、サスケが不自然なくらい驚いていたからで。

「義理?」
「うん。私がすっごく小さい頃に妹として引き取ってくれたんだって。だから、見た目は全く似ていないの」

このことも特別隠していることではない。だって、一目見ればすぐに分かってしまうから。でも、明らかに暗い顔をするサスケを見ていると悪いことをしてしまったなと心が少しばかり重くなる。恐らくサスケは世間話程度に聞いただけだっただろうから。

「ごめんね? サスケ。嫌なこと聞かせちゃって」
「いや。元々聞いたのは俺の方だ」
「……そっか」
「……なあ、なまえ。言いたくなければ別に良い。お前は他人を家族と思うことに抵抗はなかったのか?」
「……最初はもちろんあったよ。でも、あの人は生半可な覚悟で私のことを妹にしてくれたんじゃないって知って、私も向き合わないとって思ったの。今は、私達は本物の兄妹だって思ってる。それこそ血の繋がりに負けないくらい」
「そうか。悪い、変なことを聞いた」
「ううん」

サスケが何を思ってこんなことを聞いて来たのか分からない。でも、気がつけば正直に自分の気持ちを答えていて、私の答えを聞いたサスケの顔を見たらそれで良かったと思えた。

「テメー!」
「! 今の、ナルトの声?」

帰るか、サスケの声と遠くで叫ぶナルトの声が重なったような気がした。何か良くないことにでも巻き込まれているのだろうか。ナルトはトラブルメーカー体質だし。

「チッ……ウスラトンカチが。行くぞ、なまえ!」
「うん!」





「────……く、苦しい。コレ」
「こらーっ! この黒ブタ! そいつを放さないとこの俺が許さないぞ! デブ! 馬鹿!」
「馬鹿はあんたよ! 相手を煽ってどうするのよ!」
「ムカつくじゃん、お前。大体、チビって大嫌いなんだ。おまけに年下の癖に生意気で、殺したくなっちゃうじゃん?」
「なっ!」
「あーあ。私、知らねーよ」
「まあ、このドチビの後はそこのうるさいチビね!」

サスケが石つぶてを投げたと同時に木ノ葉丸くんの元へ駆け出した。

「よそんちの里で何やってんだ。テメーは」
「ふう……ギリギリセーフだね」
「サスケくん! なまえ!」
「クッ。ムカつくガキがもう一人」
「失せろ」

胸ぐらを掴み上げる手に石つぶてが当たり、地面に落ちる寸前の木ノ葉丸くんを抱えてその場から飛び退いた。
相手の意識がサスケに向いていて良かった。不自然な体勢のまま下がったから、逆上して向かって来られたらこの子を庇えるかどうかも怪しかったから。

「おい、ガキ。降りて来いよ! 俺はお前みたいに利口ぶったガキが一番嫌いなんだ」
「おい、カラスまで使う気かよ」
「カンクロウ、止めろ」
「!」
「里の面汚しめ。喧嘩で己を見失うとは呆れ果てる。何しに木ノ葉くんだりまで来たと思っているんだ?」
「聞いてくれ、我愛羅。こいつ等が先に突っかかって来たんだ!」
「黙れ。殺すぞ」
「! わ、分かった。俺が悪かった」
「ご、ご、ごめんね」

脅すための殺気なんかじゃない。もし、あれ以上カンクロウ(と言うらしい)が反発していたら本気で殺そうとしたかもしれない。お互いの名前を知っていると言うことはきっと仲間のはずなのに、二人の異様な怯え方も含めて関係性が歪に感じる。

「君達、悪かったな」
「!」
「どうやら早く着き過ぎたようだが、俺達は遊びに来たわけじゃないんだからな」
「分かってるって」
「行くぞ」
「ちょっと待って! 額当てから見て、あなた達砂隠れの里の忍よね? 確かに木ノ葉の同盟国ではあるけれど、両国の忍の勝手な出入りは条約で禁じられているはず。目的を言いなさい! 場合によってはあなた達をこのまま行かせるわけにはいかないわ」
「ふん。灯台下暗しとはこのことだな。何も知らないのか? お前の言う通り私達は砂隠れの下忍。中忍選抜試験を受けにこの里へ来た」

中忍選抜試験───そう言えば、中忍・特別上忍の仕事の一つとかでゲンマが忙しそうにしていた記憶がある。アカデミーに通う前のことだったから今の今まで忘れていたけれど。

「おい! そこのお前、名は何て言う?」
「……砂漠の我愛羅。俺もお前に興味がある。名は?」
「うちはサスケ」
「あのさ、あのさ! 俺は? 俺は?」
「興味ない。行くぞ」
「……木ノ葉丸、俺ってば弱そうに見える?」
「サスケの兄ちゃんよりはね! コレ」
「まあまあ。誰だって活躍すれば注目の的だし、案外ダークホースなんて言うのが掻っ攫って行っちゃうものだよ? ───ッ、」
「なまえ? どうしたの?」
「……ううん。何でもない」

一瞬、嫌なものを感じたけれど周りにそれらしいものは見つからないし、きっと気のせいだ。

「今の奴、俺達に気づいたみたいだぞ。どう思う?」
「確信にまで至っていないなら意味ないよ。まあ、大したことないけどさ。木ノ葉の黒髪と砂の瓢箪、あの二人は要チェックだよ」

prevnovel topnext