とん、と背中に壁を感じて、逃げ場がないことを悟った。前を向けば、ゆっくりと距離を詰めてくる恋人。顔の両サイドにつかれた腕は檻の代わりだろうか? 白い手袋をつけたそれは彼女の頬を優しく撫でる。形のいい唇が弧を描いたから、もう満足したのかなと思って視線を上げると、深紅の瞳がすぐそこにあった。


「あ……」


 焦燥を孕んだそれが見詰めてくるから、テトは射抜かれたように動けなくなる。テッドがその目をすうっと細めたのに気づき、反射的に瞼を閉じた。顔にかかる彼の吐息に、自然体がこわばる。


「ん……!」


 程なくして唇が重なった。息苦しさに、空気を求めて僅かに口を開くと、温かく湿った舌がするりと入って来た。自分のそれを絡み取られ、甘い痺れが全身に走る。何度繰り返しても慣れない、弄ばれる感覚。体のどこにも力が入らなくなって、テッドの肩にしがみつく。テトの限界はとっくにバレていたらしい、彼はすくい上げるように彼女を抱いて、脚の間に膝を割り入れた。


 このまま窒息するんじゃないかと思った時、ようやく解放された。テッドに支えられながら、ずるりと壁づたいにへたり込む。見上げると、満足げだけど意地の悪い微笑。乱れた呼吸を無理やり整え、笑うな、上手く出ない声で訴える。けれど彼は止めるどころか、喉の奥でくつくつと笑う始末で。


「無理言うなよ」
「……何が無理、だ」


 恨みがましく睨みつけて、大分落ち着いた声で問いただす。テッドは息を吐き、彼女の耳に口を寄せて、




「――お前が可愛いのが悪い」




 囁かれた言葉に、テトの頬が沸騰したように熱くなる。真っ赤になった顔を見られるのだけは嫌だから、うつむいたままテッドの胸に飛び込んだ。




あとあがき:
裏ページ作るか悩みましたがそっと格納。ある意味で
やまなし
おちなし
いみなし
な代物になってしまいましたすみません。後悔は死ぬほどしてる。その分だけ快感を(ry
こーゆーのって大抵眠い時に書くんですが実はこれ2日かかりました。
要は寝不足という訳です。
2010/01/21



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