※ボカロALL
※一応カイメイ前提です
「さーさーのーはーさーらさらー」
「のーきーばーにーゆーれーるー」
「おーほしさーまーきーらきらー」
『きーんーぎーんーすーなーごー』
リンが口ずさみ始めた歌にレンが掛け合い、ミクも便乗。そして最後に合唱しながら笹を飾り付けていく様子を見、がくぽは微笑んだ。
つい一週間程前にお邪魔したばかりだったが、せっかく七夕なのだから、と二メートル以上はある笹を手土産に訪問した所、年少組に大歓迎を受けた。カイトやメイコ、ルカは「そんなに気を遣わなくても良かったのに」と言ってはいたものの、あれだけ喜んでくれれば運んだ甲斐がある。
「ねぇねぇがっくん、晴れるかなぁ?」
「ん? ああ……例年この時期は雨だからな」
「そっかぁ……」
雲に隠れた夕日を見て心配そうに言うリンに、事実を漏らし……しまった、言った後に失言に気付く。「きっと晴れる」など気休めを言うことも出来ずにおろおろしていると、
「ほらリンちゃん、きっと二人は会う所を誰にも見られたくないんだよ」
「そうなの?」
「ん……多分、ね」
「そうなんだ! めー姉みたいだね!」
「ちょ、リン!?」
助け舟を出してくれた妹がニヤリと目配せする。貸し一つ、と言うことか……と言うか、そうなのか、メイコ殿。普段カイトの身に降りかかる受難を思い出し、彼は何故か納得した。
「それじゃ、夕飯作るわよー」
『はーい』
神威君とグミちゃんも良かったら、というメイコの誘いを、二人はありがたく受けることにした。
リンの心配が悪い意味で当たったらしく、夕食が出来上がった頃、突然バケツをひっくり返したような雨が降り出した。
あーあ、降ってきた。リンが残念そうに呟いた、その時。
「あーもう畜生ッ!! お邪魔します!!」
礼儀正しいのか雑なのかがよくわからない挨拶と同時、バタンッと強くドアを閉める音。その少しかすれた声には聞き覚えがある。ドタバタと廊下を走ってきた人物は案の定、頭から雨にうたれた初音ミクオその人だった。
普段この家に入り浸っている彼は軽く扱われることも多いが、ずぶ濡れなら話は別。流石に心配したルカがバスタオルを持って来た。
「ほら、風邪引くわ」
「ん、サンキュ……カイト、これもう食っていいよ」
「何それ?」
「カイコに頼まれたハーゲンダッツ。どうせ雨でぐちゃぐちゃだろうし、上がったらまた買いに行く」
言ってビニール袋を持った左手をカイトに突き出し、受け取ったのを確認するや否や、彼は食卓についた。
「ちょっと、ウチで食べてくの?」
メイコが咎めるように言ったが、ミクオは「連絡なら今入れたよ」としゃあしゃあと言い放つ。が、彼女は息を吐き、「カイコちゃんに怒られる方が効くか」と一言。穏やかな人とばかり思っていたが、カイコ殿は一体……。グミに目をやるが、彼女も「わからない」と言わんばかりに肩をすくめるだけだった。
「あ、ほらほら!」
夕食の時間も終わり、まったりとくつろいでいた時、不意にミクが窓の外を指差した。
「晴れた! 晴れましたよ!」
見ると、空は晴天。分厚い雲は消え、雨に洗われた夜空に星が煌めいている。
「よし、みんなで短冊書こうぜ!」
レンが細い紙を取り出し、静かだったリビングがまた賑やかになった。
天の川、きらきら
(「ねぇミクオちゃん、雨上がったけどまだ帰んないの?」
「いいんだよ、どうせカイコにどやされるのは変わんないし」)