※ソラサラとテッド
……暑い。
蒸し暑い部屋の中で、テッドはため息を吐き――吐いた息の熱にまで嫌気がさした。
暑い、とにかく暑い。もう七月、夏と呼べる時期なのだから当たり前と言えば当たり前だが……
(……何も、冷房を制限しなくても)
暑いとは言えまだ七月、夏本番までは時間がある。体を冷やすといけないから、今月はリビング以外では冷房禁止――というデフォ子直々の命が発令され、そのために西日が差し込む自室は灼熱地獄。窓を全開にしても、ジャケットを脱いでシャツとスラックスのみの軽装にしても、それで涼しくなる筈もなく。一人で読書したかったのだが仕方ない、諦めて部屋を後にした。
――が、リビングに入るなり、彼は絶句する羽目になった。
「……何、してる?」
「雑誌読んでるのよ」
「雑誌読んでるんです」
「いや、確かにそうだが、そうじゃなくてだな……」
ぴったり同じタイミングで返された言葉は、やっとのことで口にした疑問を解決するそれではなく。だが「他に何が?」と言いたげな目で見られると、自分が間違えているような気も……
(いや、流石にそれは無い)
この二人がズレているのは今に始まったことでは無いが、だからと言って自分の感覚が麻痺した訳ではない。いくら仲がいいとは言えおかしいだろう。何故――
「何で、そうくっ付いているんだ……?」
テッドが訊きたかったのはそれだ。膝の上に座るサラの腰に、ソラが抱き込むような形で腕を回している、この状況を。
「ああ、これですか?」
ようやく理解したソラが、自分の腕をやや持ち上げることでそれを示す。が、
「姉さんのお腹が冷えないように暖めてるんです」
「そうそう。ソラの腕、あったかいし! ねー?」
「ねー」
……駄目だこいつら。
テッドは盛大な溜め息をつき(皮肉的な意味を込めての行動だったが、悲しいことに効果はなかった)、少し離れた所に座って本を開いた。
「ねぇねぇソラ、このお店行ってみたい!」
「いいね、今度一緒に行く?」
…………。
「でもここだとちょっと遠出になっちゃうわね……あ、ついでだし色んな所行きましょうよ!」
「うーん、こっちの方面はあんまり行かないから……」
「だからこそよ! たまには冒険しなきゃね♪」
……………………。
「そっか。じゃあお昼どうする? こないだ見つけたスープカレーのお店は逆方面だし」
「もー、ソラはカレー好きすぎ!」
………………………………。
「む……姉さんだって人のこと言えないでしょ?」
「うるさい、このカレー男!」
…………………………………………。
「もう、これだから姉さんは……えいっ」
「きゃ、ちょ、ソラ、くすぐった」
「いい加減にしろッ!」
思わず目を剥き、仲良し姉弟に叫ぶ。しかしきょとんとした目をした彼らに、テッドは頭を抱えた。
仲が良いのも大概に
(余所行ってやれ、余所で!)