※UTAU家オール



「ふんふふんふふーん♪」


 昼下がりの小道を、ほぼ同じ背丈の二人が、繋いだ手をぶんぶん振りながら歩く。鼻歌混じりに足を進めるのはリツで、顔には満面の笑みを浮かべ、上機嫌だ。


「楽しみだねデフォ子!」
「うん」
「でもモモって凄いよね、何でも出来ちゃうんだもん!」
「モモ、器用。デフォ子、保証、する」


 それに対し、普段殆ど感情を表さないデフォ子も口を綻ばせる。
 リツは元気良く「うん!」と応え、左手で抱えた包みをぎゅ、と握りしめた。




「あら、お帰りなさい」
「お、りっちゃんお帰りー……」


 帰宅すると、モモと殆ど寝かけのルコが顔を上げた。リツはモモに駆け寄り、紙袋を差し出す。


「はい、これ! デフォ子も一緒に選んでくれたんだ!」
「そうなんですか」


 彼女はとびきりの笑顔を浮かべる末っ子の頭を撫で、同じように笑う。


「それじゃあ、さっそく作りますね」


 用意されていたミシンを見、リツは「やったぁ!」と両手を上げた。




 事の始まりはつい昨日、暑い暑いとゴネるリツに、サラが自分の浴衣を着付けたのがきっかけだった。ソラに「何やってるんだよ」と突っ込まれていたが、リツ本人は気に入ってしまい、それはそれは眩いばかりの笑顔で言ったのだ。


「ボク、これ欲しい!」


 とは言えそれはサラの物。困る彼女を見て気を遣わせたモモが、それなら私がぴったりの物を作るから、気に入った生地を買って来て下さい、と“おつかい”に行くよう言ったのだ。一人で行くよりはとデフォ子が付き添い、そして今に至る。



「でもモモ、本当にユカタなんて作れるの?」
「作れますよー。平面だから、洋服を縫うよりは簡単ですし」
「そうなの!?」
「はい。最高速度で作業しますから、ちょっとだけ待ってて下さいねー」
「はーい!」


 リツが離れると同時、モモの瞳から笑みが消え、ミシンが唸りを上げた。




 日がとっぷり暮れ、外出していたキメラ達が帰ってきた頃には浴衣は完成し、リツに着付けられていた。


「あ、テトとおじさんお帰りー」
「誰がおじさんだ誰が」
「リツ、何だそれ!」


 テッドとリツのいつもの応酬を遮り、テトが紫地の浴衣を指差す。リツは胸を張り、


「いいでしょ、モモが作ってくれたんだー!」


 ふふん、とほくそ笑む六歳児を見、テッドはモモに呟く。


「……女物なのか」
「はい! リツ君にはこっちの方が似合うと思いましたから!」
「えへへ、ありがとうモモ! ……ところで、おじさん達はどこ行ってたの?」
「誰が……いや、これを買いにな」


 言って、彼は手に持った袋を持ち上げる。リツが覗き込もうとすると、突然廊下側からドアが開いた。


「あら、似合ってるじゃないリツ!」
「……サラ、浴衣、なんで?」


 弟を連れて現れた彼女は、昨日リツに着せた、紺地に紫陽花柄の浴衣を纏っていた。が、サラは「いいじゃない! デフォ子もどう?」と答えになっていない対応。ソラは頭を抱えながらもテッド達に歩みより、声をかける。


「皆さん、お帰りなさい。あとモモさん、ろうそくありましたよ」
「あら、ありがとうございます!」
「ねぇねぇソラ、なんでろうそく?」
「良く訊いたなリツ!」


 割って入ったのはテトだ。彼女は誇らしげに両手を腰にあてて、


「今日はみんなで花火をするんだぞ!」
「花火!?」
「ああ、もう夏だからな。ほら」


 目を輝かせたリツに、テッドは袋の中身を見せてやる。手持ち式を中心に簡易的な打ち上げ花火まで、テトが選定した物を大量に買い込んできたのだ。相当重かったらしく、荷物持ちをしていたテッドはぐるりと肩を回した。


「オヤジくさい……」
「……何か言ったか?」
「ううん! ねぇねぇデフォ子、早く外行こうよ!」
「うん。ほら、ルコ、起きる、して。花火、する、みんなで」
「う…………え、花、火ぃ……花火!?」


 やるやる! 結局お子様なルコは、珍しく跳ね起きた。リツがデフォ子を引っ張り、テトはモモを連れて、ルコとサラは喋りながら後に続く。残った男二人で花火一式を持って、一同は家の前へ出た。



花火大会
(「はい、熱いから気をつけて下さいね」
「わぁ、キレイだねデフォ子!」
「うん。デフォ子、線香花火、好き」
「うらうら、こっちもスゴいぜりっちゃん!」
「振り回すなルコ! 火傷したらどうする!」
「いいじゃないかテッド、綺麗なんだから!」
「……ところで姉さん、何で浴衣を?」
「だってこっちのが雰囲気出るじゃない!」)




あとがき:
りつまつりだけど何書こう→祭りなんだから浴衣着せたいね→やっぱりモモが縫うのかな→祭り行かせるのはありきたりだからUTAU家で花火でもさせようか
……という思考で書きました。
ウチの子全員をいっぺんに動かすのはやはり厳しかったです(苦笑)
そしてさり気なくモモ初書き。

UTAU二次創作界の底辺からだけど、りつまつりおめでとう!


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