デート、なんていつぶりだろう。噴水の前に佇み、カイトは思考を巡らせる。
 最初の頃、二人しか居なかった時は――そんなお題目こそなかったけれど、よく一緒に出かけたと思う。人一倍照れ屋な彼女は言葉にこそしなかったが、きっと同じ気持ちだったんだろう。小さな手を握っても怒らなかったのが良い証拠だ。
 そうしてやっと「恋人同士」になった頃、妹が来て、次に双子、お隣にも兄妹がやってきて……仲間が増えるのは楽しかったけれど、彼女と過ごす時間は減ってしまったと思う。それは少し、寂しかったりもして。


 だから、こんなリクエストをしたんだろうな。


 ふ、と息を吐くと、視界の端に赤い影。真っ直ぐ自分のもとへ走って来る愛しい人を見、彼は微笑む。


「おはよう、めーちゃん」
「ごめ、遅く、なった、わ」
「いいよそんなの」


 メイコが息を整え顔を上げた所で、カイトは左手を差し出す。


「どこ行きたい?」
「別に、あんたの誕生日なんだからあんたの行きたい所でいいじゃない」
「そんなの関係ないよ。めーちゃんが喜んでくれるのが俺の至福なんだから」
「……ばか」


 そう言って顔を背けられたけれど、それが罵り文句じゃないのは百も承知。彼女の小さい手が自分の手をきゅ、と握ったことに、彼は口を綻ばせた。





たまには二人、手をとり歩こう
(恋人らしく、二人きりで出掛けよう)




あとあがき:
カイト兄さん誕生日おめでt(ry
ここまで来ると遅刻なんてモンじゃないよねってことでこっそり格納。

カイメイのつもりがほとんど兄さん単品になってしまったのは何故でしょう。
そしてカイメイ初書きがこれってのもどうよ。
2010/07/01



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