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私はその後、怒篭魂の人たちに何かをされるわけでもなければ、他の生徒たちからすら手出しされなかった。

それもこれも、宇崎が衆目の前で「今日からこいつ、俺のな」と堂々たる宣言をしたせいだ。
初めは怒羅魂の人たちも、お前何言ってんだ?って顔をしていたけど。
宇崎がぴったり私の傍を離れない様子を見て、何かを察したらしい。

「そ、そうか!宇崎、お前、そいつを自分の奴隷のようにしようって魂胆だな!?追い出すよりも傍に置いて、たくさん苦しめてやるつもりだろ!」

俺には分かる!なんて、片耳ピアスの人が言い出して、周囲もなるほどと納得していた。

「その女のことは正直、この手で殺してやりたいくらい憎いが……総長の決めたことでもあるからな。僕は、特に異論はない」
「右に同じく〜。だって、宇崎の奴隷でしょ?あまりにもカワイソだも〜ん。ま、万が一にも宇崎に惚れないように注意しなよぉ?俺より酷いやつだから、これ!」

メガネくんは冷たい目でこちらを見下していて、彼の肩に腕を乗せてせせら笑うのは、美原先輩だ。

残りの二人……茶髪くんと総長さんは何も言わなかったけど、二人の態度は「勝手にしろ」と言わんばかり。

こうして、誤解は解けずじまいだったものの、なんとか私は学校から追い出されずに済んだのだった。


***


「な、なんであん……空音ちゃんと千歳くんが一緒にいるの!?」

放課後になって、珍しく午後の授業をサボらなかった宇崎と適当な会話をしながら昇降口に向かっていると、運悪く怒篭魂幹部を引き連れた来栖嬢に出くわしてしまった。

彼女の驚いた様子と言ったら。
あの、完璧な演技を忘れ、私のことを一瞬「あんた」と呼びそうになるくらいだ。
それに気づいたのは、どうやら私だけだったみたいだけど。

「……」

ちなみに宇崎はそんな来栖嬢をスルーだ。
特に何を言うわけでもなく、来栖嬢に視線を送るわけでもなく、ただその真横を通過していった。

まるで、来栖嬢の存在にすら気づいてないと言わんばかりに。

……ちょいと、宇崎さん?
来栖嬢に好意がないことは十分に分かったけど、それでもあけすけに無視するのは人としてどうかと思うよ。

来栖嬢の質問には、宇崎に代わり私が答えることにする。

「まあ、なんと言うか、よく分からないけど私、宇崎の奴隷認定されたみたいでね……」

それも、周囲が勝手に。

宇崎はきっと、私を自分のもの扱いすることで縄張りを主張し、私を守ってくれているのだろう。
おかげで午後の学校生活は快適だった。
生徒たちからは未だ後ろ指をさされるものの、宇崎が隣にいるだけで面と向かって嫌がらせをされることはなかったし、何より誰からも睨まれることがなかった。
宇崎効果は絶大だ。

で、効果を持続させるために、これからは帰りも一緒に、ということになった。
何もそこまでしてくれなくても、ねえ……。
遠慮はしたが、カバンを奪われて「ついて来いよ」なんて言われてしまえば、無駄な抵抗も観念せざるを得ないというもの。

だから今私が宇崎といるのは不可抗力であって、ちなみに言えば、私を“奴隷”状況にさせたのも来栖嬢が原因じゃないか。

と、そんな意味を込めて彼女に説明すれば、私が答えたことが気に食わないのか、盛大に顔を歪めた。



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