小説 | ナノ


貴方がいるから安心してぐっすりと寝てしまいますよ


「眠たいんですか?」

「いや、全然」

本当は目をこすりたくてたまらない
あくびもしたくてたまらない
寝そべってしまいたい

つまり、眠たい

だけど、彼女はけしてそんな素振りをしない。
なぜなら彼と居られる時間は限られているから
彼は仕事で忙しいのだ。
構ってもらえる時に構ってもらわなくては
とは言っても、彼女も昨日、徹夜勤務だったのだが。

睡魔という悪魔は彼女から離れず
足を腕を頭を掴んで
床へ沈ませようとする

身体は身体で休息を求めてme aider!Help me!助けて!と鳴り響く

それでも動く彼女の身体
首は彼に向くし目が合えば笑う

精神的な意味では休息をもらっているのだ

「目が眠たそうにしていますよ」

「大丈夫です!」

彼は彼女が疲れているのも眠たそうにしているのもわかった、
そんな素振りをしなくとも。
なんとかして休ませなくては
その考えが彼によぎると、彼は口を動かした

「私は今日一日お休みなんですよ」

「知ってますよ、だから会っているんじゃないですか」

「普段は朝から夜までお仕事なんです」

「そうですね」

「だから身体を休ませたいんです」

「あ・・・そういうことですか・・・じゃあ、もうお帰りになりますよね?」

二人は恋人、という関係にあるが
夫婦、という関係ではなく
仕事によって会う時間も少ない
疲れているのはわかる
眠たいのもわかってる
それでも唯一の時間を共にしたいという気持ちから身体を動かしていた彼女
そんなことを言われては少し悲しくなる

しかし、彼の邪魔はしたくない。
だから悲しい表情はあまり出さなかった。
一瞬を除いて。
その一瞬を彼は見逃してはいない

「ええ、帰って寝ます。貴方と一緒にね」

「え?」

「ほら、世の中にはこういう言葉があるんですよ。
お家デートっていうね」

彼女は大変驚いた顔をしてから
にっこりと笑った





貴方がいるから安心してぐっすりと寝てしまいますよ








×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -