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二人で泳げば良い


息が出来ない

足をバタつかせてみても
手を動かしても
沈んでいく

手は水の中にいつまでも埋まってる
私は泳げないで
いつまで経っても苦しいまま

誰か助けて
なんてことも叫べるわけもなく
口を開ければ水が体内へ舞い込む

そのまま死んでしまう気さえした。

諦めようと目を閉じた時
私の手を握って深海から陸まで連れて行ってくれた
泳げた
一人じゃなかったから
いや、貴方がいたから

その手は大きくて私とは全然違って
別の存在ということを確かめさせる

「海の中に溺れたら助けてくれる?」

「はぁ?」

「助けてくれる?」

「知らねぇよそんなもん」

「そっかぁ」

「・・・助けてやるよ」

「・・・うん、ありがとう」

でもね、君はもう助けてくれたんだよ

人混みに紛れて押されて引っ張られて疲れて
悩みとか苦しみとか辛さとかっていう海に溺れた私を

私が一人で抱えるのは余りにも重い





二人で泳げば良い








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