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もしも
私が透明人間ならいつでも貴方にひっついていてもばれはしない

そしたらどんな時も片時も離れないで貴方だけを見るの

ずっと、ずぅっとね

でも貴方はきっと
透明な私でさえも見抜いてしまうんじゃないかしら
だって、貴方のその目は何もかもを見抜いてしまうから

ねぇ、貴方から見て私はどんな風に見える?
いや、眼中にもないか。

あぁ、もしも
貴方が私も見てくれたなら
それだけで心臓が射抜かれたような衝撃で
もう倒れてしまう

まあ恋心からなる、もしも。ですけど

どうしてかしら私は貴方を意識してしまって止められなくて

もしも
この気持ちが止められるなら
貴方が私を見ないことなんてどうとも思わないのに。
見たい、触れたい、話したい、なんて貪欲なこと考えはしないのに!

ここは王牙学園、そんなこと考える暇があるなら訓練をしなくては!
こんなこと考えるのはきっと私がたるんでいる証拠だわ!

周りの人は帰ってしまって私は一人で自習訓練
いいの、いつものことだから。
友達も健気に頑張って訓練してるって思ってくれて、いつも邪魔しないようにってそっとしておいてくれるの。
まあ、実際はたるんでいるのを直したくて必死に自習しているだけなのだけど。
良い友達を持ったわ・・・
そういえばあの人の友人、エスカ様やミストレーネ様は練習とかひょいひょいっと簡単にできてしまうのかしら・・・?
むしろあの人は訓練をどのようにして受けているよかしら・・・
基本、男女別に訓練を受けるから・・・って!またあの人のことを!!
たるんでるわ!たるんでる!!
そんなひ弱な私では戦場ですぐ倒れてしまうわ!

「少し、休憩した方がいい」

「ほっといて下さい!私は今、心の葛藤と戦って居るのです!」

「だが、休憩もせずにずっと訓練していると体に影響が」

「私の訓練の邪魔を!」

しないで下さい!
そう言おうとしました。
友人達はそっとしておいてくれるはずだから、今、話しかけてくれているのは友人でないことは明らか
私は自身の心のたるみを一刻も早く直したくて苛立ってしまっている。
正しい忠告を跳ね返してしまう程に。

ところでその正しい忠告を下さったのは、誰だと思います?

「ばっ!バダップ様!」

「休憩を」

「えっあっ」

「うちの生徒が訓練のし過ぎで倒れてしまってはこの先の示しがつかない。」

「は、はい・・・申し訳ございません」

私ったら、バダップ様になんて口の聞き方を!
あぁ、でも私のことを見てくださった!
視界に入れて下さった!
嬉しい!なんて幸福なのかしら!

「心の葛藤・・・とは?」

うっ!
聞かれてしまった。
でも、ごまかすことなどしてはならないわ!
だってバダップ様から話しかけて下さり、問いかけて下さった!

「はい、私、とある方に恋心を抱いてしまい、その人のことばかり考えてしまうのです。
兵士としてそのような感情は捨て去るべきだと考え、なんとか押し殺そうと思い、訓練に励んでおりました」

「・・・。」

飽きられてしまっかしら。
当たり前ですよね、ええ・・・

「いらない感情など、あるのだろうか」

「・・・?」

「好きな人とは?」

「えっ」

「言えないか?」

「・・・申し訳ございません」

「・・・そいつは幸せ者だな。君に想われて」

「そうでしょうか?」

「人を愛するのは、けして悪いことではない、その人がいるからこそ、頑張れることがある」

「バダップ様・・・も恋を?」

ふっと笑うだけで、答えてはくれない。
ああ、その想い人が私なら良いのに

「羨ましいです、その人」

「何故?」

「貴方と愛し合うことが出来るのだから」

「・・・」

「・・・お話に付き合って下さり、大変光栄です。
ご忠告通り、休憩をとってきます。
有難う御座いました。」

その場にいるのが辛くて
逃げたくなった

「なまえ」

「っ!?」

通り過ぎようとして、声をかけられた
私の名前、知っていらしたのですね
いや、それよりも止められたことに大変吃驚です

「バダップ様?」

「君が」

「?」

「君が・・・」

You gave me to say that I love

ここはもしもの世界なのかしら

And say I love you too

いいえ、違うわ
だって私の前に居る貴方は
誰にも見せない顔をしているの。
赤くて照れたような笑みなのよ

もしもの世界でも、こんなとびきりな笑顔、想像できない。




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