天下分け目の交渉合戦
制限時間15分の騎馬戦。それは、個性発動アリの残虐ファイトである。
まずは騎馬戦のチーム決めのため、15分の交渉タイムがスタートした。
強子はキョロキョロとあたりを見まわす。目当ての人物を探して視線を彷徨わせていると、強子の肩がちょんちょんと突つかれた。
「強子ちゃん!私たちと組まない?」
「透ちゃん・・・と、耳郎ちゃん」
クラスメイトの女子二人に声をかけられた。
そうだよなぁ、やっぱり同じクラスで互いをよく把握している相手と組むのが常套手段だよな。
まわりで行われているチーム編成の交渉を見てみても、やはりA組はA組どうしで固まっている。
ふいに、切島たちに囲まれている爆豪と視線が絡み合った。
「「!」」
その瞬間、互いに、意味もなく視線をそらせなくなる。
目を合わせながら強子は、ほんの一瞬だけ、彼と騎馬戦を組むところを想像した。
純然たる戦闘力。頭の回転の速さ。何事もそつなくこなすセンスの良さ。どんな窮地に立たされたって、めげずに、必ず打ち勝ってしまう強靭な精神力。
爆豪が“仲間”であれば、心強いことこの上ないだろう。彼と共闘すれば、無敵だとすら思う。
突然、強子はぎゅっと目を閉じたかと思うと、ぶんぶんと大きく首を振った。
「ど、どしたの強子ちゃん!?」
「ごめんっ、二人とも!!」
顔の前でバチンと両手を合わせると、頭を下げる。
「私っ、他に組みたい人がいるから!!」
中遠距離でも攻撃可能な耳郎に、透明だから相手に動きを悟らせない葉隠。二人と組むのも楽しそうだが、断りを入れる。
そして、その場を離れて再びキョロキョロとあたりをみまわした。
強子には、かねてより組みたいと考えていた相手がいるのだ。もちろん、それは爆豪でもなく・・・
「(私が組みたいのは“彼”だ!)」
強子が目当ての人物を見つけ、そちらに駆け寄っていく。
「ねえ!私と組まない!?―――普通科の心操くん!!」
「!?」
強子が彼に声をかけると、彼は驚いたように目を見開いて身構えた。表情からも、ものすごく警戒されていることが見てとれる。
心操の横には、すでに彼の『洗脳』にかかっている尾白と、B組の庄田がいる。
「あともう一人、探してたんでしょ?なら、私と組んで騎馬戦しようよ!あ、私はA組の身能強子、個性は『身体強化』だから騎馬戦でも役に立つと思う!」
「・・・お前、何考えてんだ?」
強子が友好的な笑顔で接しようとも、彼は警戒を怠ることなく、むしろ、より用心するように一歩後ずさった。
まあ警戒するのも無理はない。予選を勝ち残ったほとんどはヒーロー科。普通科だけど本選に残った彼は、アウェー状態だ。気心知れた仲の人なんか一人もいなくて、まわりは敵だらけ。
そんな中、親しげに接してくるような奴、何か企んでいると考えるのが普通だ。僕と契約して魔法少女になってよ、と並ぶくらい胡散臭い。
「心操くんはA組に宣戦布告しに来るくらい、勝てる自信があるんでしょう?私は勝ちたいから・・・勝てそうな君と組みたいと思ってたんだ」
「お前・・・俺の個性が何か知ってるのか?」
強子は意味深な笑みを浮かべたかと思うと、ちらりと視線を尾白と庄田に向けてから、また心操を見やる。
「騎馬戦は一人じゃできない・・・どうせヒーロー科の誰かと組むことになる。だったら、君が“操る”だけの仲間より、自分の意志で勝とうとする仲間と組んだ方が、勝つ可能性は高いんじゃない?」
心操は目を見開き、ぽかんと呆けて強子を見つめている。
彼の前に、握手を求めるようにすっと手を差し出す。あと一押し、そう確信して追い打ちをかける。
「ほら、もう交渉時間なくなっちゃうよ!?ヒーロー科の頼れる身能サンと組むの?組まないの?ここで勝ちあがるために何が必要か・・・よく考えて選んで」
心操はまわりの状況を見てから、ようやく覚悟を決めたらしい。苦虫を噛んだような顔で、心操は強子の手をとろうとした―――が、強子はその手をひょいと避けた。
「は!?お前どういうつも・・・」
「一つ約束して・・・私と組むかぎりは――私にその『個性』を使わないって」
ニコッと笑顔で、心操の返事を待つ強子。彼はハァとため息を吐きだした。
「・・・お前が裏切らない限り、俺もお前を裏切らないよ」
そして、今度こそ握手をかわした二人。
これで強子の騎馬戦のメンバーが確定した。騎馬の三人はパワータイプでブレない馬だし、騎手はなんたって個性が洗脳だ。
「(やったぜっ・・・これで騎馬戦は必勝まちがいなし!)」
したり顔を心操から隠すように背を向ける。そして強子はコソコソと耳元に手をやると、耳栓を外した。
そう、彼女は心操に話しかける前からずっと耳栓をつけていた。
彼の個性は、問いかけに答えた者を『洗脳』する。だったら、問いかけを聞かなければいいのではないか?そう推察し、彼の言葉が耳に入ってこないよう対策したのだ。
障害物競走のあと、八百万に頼んで『創造』してもらった耳栓。防音性はばっちりだ!
なぜこんな対策したかというと、彼と交渉する際、警戒する彼は、強子に個性を使うだろうと考えたからだが・・・先ほどの心操の反応を見る限り、予想は的中したようだ。なぜか個性がきかない強子に、彼はかなり驚いている様子だったし。
「(しかし、意外とバレないもんだな)」
耳栓するということは、相手が何を話しているかも聞こえないわけで。強子は彼の態度や口の動きから、彼が言うことを予測して会話するしかなかった。
まあそれにも限界があるから、最終的には言いたいことを一方的に告げるだけになったのだが。
強子はドクドクと騒ぐ胸を押さえながら、ハッタリが無事に通用したことに安堵し、ほっと息をついた。
『さァ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』
心操チームのポイントは、現状470Pである。
心操が騎手をつとめ、強子は前騎馬、尾白が右翼で、庄田は左翼だ。
勝負開始のカウントダウンを聞きながら、強子はワクワクがとまらず、舌なめずりする。
「どうする?心操くん・・・どこのチームから攻めようか?」
やはり因縁の相手、爆豪か。エンデヴァーの息子として注目を浴びる轟か。はたまた、予選一位で1000万Pの緑谷から奪ってしまおうか。
戦う相手が誰だろうが、負ける気がしない。心操の洗脳を破ることは容易くないぞ!
フィールドに「スタート!」と合図が響くと同時、彼は静かに答えた。
「しばらくは様子見だ」
「・・・はい?」
彼から返ってきた答えに、強子は耳を疑った。
「今、なんて・・・?」
「当分はこっちから仕掛けることはしない。なんなら終盤までにハチマキを取られたってかまわない。大事なのは・・・本当の勝負は、終盤だ。最後に高いポイントを持ってる奴からハチマキを頂戴する。それで、第二種目は勝ち残れる」
冷静に、淡々と告げる心操。
前騎馬の強子は、後ろを振り返って心操を見上げた。
「・・・なにそれ、」
なんだよそれ。そんなの聞いてない。
静かに、呆然と心操を見上げる強子を怪訝に思ったのか、心操は眉をひそめている。
彼の話す作戦も、わからなくない。確かに合理的だ。最初から多くのチームを敵にまわして手の内をさらすより、ずっと賢くてうまいやり方だ。だけど―――
「そうじゃ、ないでしょう・・・!」
「ッつ!」
心操の足を支える強子の手にギリギリと力が入り、その痛みに心操が顔を歪めた。
「ヒーローに憧れるなら!常にっ、本気でっ、やれっ!!!」
「!?」
「“賢く”やるんじゃなくて、“全力で”やるのがヒーローだっ!!」
心操を睨みつけると、強子は心操に力強く吠えた。
ちらりと強子の視界に爆豪が入ったので、そちらを顎で指し示す。
「ああいう、常にトップをねらう奴に勝つにはっ!自分も、常に勝利に対して貪欲にならないと・・・勝てないっ!!」
常にトップをねらう者と、そうでない者の差は、すぐに浮き彫りなる。その差は時が経つほどに大きくなる。だったら、ほんの一瞬だとしても、現状に甘んじてなんかいられない!
その場しのぎで、ずる賢く勝利をかすめ取ってばかりで、最高のヒーローになんてなれるわけない!
合理的な作戦なんかクソくらえだ!そんな作戦ねらずに、フィールドにいる全ての騎手を洗脳すればいいじゃないか!
「・・・オイ、その“常にトップをねらう奴”がこっちに向かってきてるぞ」
「ふぇ!?」
慌てて心操の指さす方を見ると、爆豪チームの騎馬がこちらに一直線に向かってきていた。初っ端から、手ごわい相手に狙われたもんだ。
爆豪は言わずもがな、切島も瀬呂も芦戸も、強子を見て不敵な笑みを浮かべている。爆豪チームは皆、ヤる気満々だ。その殺気が、彼らの視線からひしひしと伝わってくる。
強子はごくりと喉をならし、身体をぶるりと震わせた。A組を敵にまわすことの恐ろしさを、身をもって体感する。
「悪いな、身能!尾白!お前らのポイントもらってくぜ!」
「取られてたまるかっ」
瀬呂が心操めがけてテープを射出したのを見て、強子は騎馬を崩さないように跳びあがると、瀬呂のテープに噛みついた。まったく、騎馬は手が使えなくて不便である。
咥えたテープをペッと吐き捨てると、四人をじろりと見据える。
「身能、お前・・・ガッツすげぇな」
「てめーが騎手じゃねえのが残念だ・・・俺の手で直接ぶちのめしてやれねぇもんなァ!?」
言うと同時に、爆豪は爆破で高く跳びあがり、そのまま心操に跳びかかった。回避が、間に合わない。心操も無抵抗ではなかったが、やはり個性を使わなければ、実力差がありすぎて勝負にはならない。あっけなくハチマキは爆豪の手におさまった。
「ああああー!!せっかく私(と他3名)が頑張って稼いだポイントがぁぁ!!」
爆豪が「っしゃ!」という歓喜の声をあげるとともに瀬呂のテープで回収されていく。そして爆豪は、強子チームのハチマキを首に巻くと、勝ち誇った笑みを残してすたこらと去っていった。
それを見ながら、強子の身体はふるふるとわずかに震えている。騎手の心操にもそれが伝わり、訝しげに強子の様子をうかがった。
「おい、身能?」
「・・・取り返そう」
「は?」
「ハチマキ!絶対に取り返す!!」
目が据わっている彼女は、怒りのあまり冷静さを欠いているように見える。強子のその様子に心操は、呆れたようにため息をこぼした。
「それなら、終盤まで待ってから・・・」
「アンタまだそんな悠長なこと言ってんの!?」
ぐるりと首をまわして強子は心操を睨み上げる。
カッと頭に血が上っていることは自覚できるが、自制はできない。強子は思ったまま、怒りを発散させるように言葉を心操に投げつける。
「終盤までこのまま指くわえて見てろってか!?私は手が塞がってるから指もくわえられないけど!」
「・・・身能、一回落ち着け」
「落ち着けるわけない!爆豪チームにハチマキとられてるんだよッ!?」
「それは、ここで個性をつかっても・・・」
「最後まで個性を使わないつもり!?私たちは0ポイントのまま、10分以上も時間を持て余すってわけ!?」
「この騎馬戦で確実に勝つためだ。今はまだ・・・」
「もうっいい加減にしてよ!私はっ!本気で、勝ちたいんだよっ!!」
「・・・だったら、俺の言う通りにしろ!」
「いや、だっ・・・―――」
答えると同時に、強子の意識は霧がかかったようにボヤけ、そこで強子の記憶は途絶えた。
『1位 轟チーム!2位 爆豪チーム!3位・・・』
強子のボヤけていた意識が、ゆっくりと浮上してくる。
『アレェ!?心操チーム!!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』
マイクの実況で、霞がかっていた強子の意識がクリアになり、すぐに状況を把握した。
『4位 緑谷チーム!以上、4組が最終種目へ進出だああーーー!!』
騎馬戦が終わった。
その結果は、強子の知っている通りのもの。けれど、強子はこの結果を望んでいたわけじゃない。
ぐっと震える拳を握りしめ、強子は心操と正面から向かい合った。
「なんだよ・・・お前の望んだ通り、俺たちの“勝ち”だろ?もっと喜べよ」
眉根を寄せてキッと心操を睨むと、彼の胸ぐらを掴んだ。
「私に個性を使わないって約束だったじゃない」
「・・・お前が反発して俺の信頼を裏切ったからだ。言っただろ?お前が俺を裏切るようなら、俺もお前を裏切るって」
心操が強子に個性を使ったせいで、強子には騎馬戦の途中からの記憶がない。
けれど結果を見る限り、彼は当初の作戦どおりにコトを運んだのだろう。終盤まで頑張ってポイントを稼いだ奴から、終盤でポイントを奪うという作戦。
「アンタねっ・・・ヒーローなめんなよ!!」
強子が思いをぶつけるように叫んだ。その必死な声が、フィールドに響く。
『ってオイオイどうした!?勝負が終わった後で仲間割れかぁ!?』
マイクに実況され悪目立ちしてしまったことに気付くが、その程度でおさまるほど、強子の憤りは生易しいものじゃない。
「心操くんの夢は、ヒーロー科に入ることじゃなく、プロヒーローになることでしょう!?だったら、体育祭のリザルトだけにこだわらないで、体育祭の一分一秒も無駄にしないよう、常に全力でやりなよっ!」
「!」
「たとえ騎馬戦でいい結果でなくても、プロの目に留まればスカウトされるかもしれない!ヒーロー科の皆はそんなの百も承知だよ!だから予選から本気で臨んでる!アンタも、もっと先を見据えて行動しろっ!!」
騎馬戦の序盤だって中盤だって、自分をアピールできる絶好の場だったんだ。
けれど、心操に操られていた強子には、何もできなかった。きっと、ぼけっとフィールドに立ってただけなんだろう。アピールもクソもないぞ畜生!
「なにか事情があって個性使用を控えたんだとしても・・・どんな事情も限界も超えてプルス・ウルトラすんのが雄英生でしょうが!私なんて今日のために特訓しすぎて、体中が筋肉痛に見舞われてるけど、それでもいつも以上に酷使してんだから!」
『いや・・・そりゃ自己管理できてないお前がアホだろ』
冷静なマイクのツッコミは、今は聞こえないフリをしておく。
「・・・俺だって、お前みたいなヒーロー向きの個性に恵まれてたらッ、こんなセコい手は使わずに正面突破してたよ!でも・・・!」
「はあ?強個性のアンタが、ひがんでんじゃないっつの!」
「!?」
心操の言うことは心底理解できない。
洗脳だなんて、最強に近いチート個性じゃないか。何をひがんでいるのやら。
「私は、自分が強個性だと思ってた・・・だけど、A組(うちのクラス)にはもっと強い個性、有用な個性、羨ましいと思う個性ばっかりで。皆に負けたくないから、早く追いつきたいからッ・・・だからこんなに、ダサいくらいに必死なんだよ!一瞬だって気が抜けないんだよ!!」
「(身能のやつ・・・!)」
「(強子さんったら・・・!)」
「(A組でも屈指の問題児が・・・!)」
「(ヒーロー科随一の破天荒娘が・・・!)」
「「「(そんなふうに思ってたなんて・・・!!)」」」
「・・・ん?」
何故かA組生徒の多くが、目頭を押さえていたり、両手で顔を覆ったり、天を仰いでいるのだが・・・どうしたんだ?強子は訝しげに眉根を寄せた。
『くぅ〜っ熱いぜ身能!級友に遅れまいと奮闘する姿は、泥くさいが勇ましいぜ!さすがは雄英史上はじまって以来の特例・・・補欠入学者だァ!!』
「えっ、あチョッ、マイク先生ぇ!?」
今、強子にとって人生の汚点である“補欠入学”をバラさなかったか?スタジアム全体にいきわたるアナウンスで。全国放送されているこの場で。
観客席がざわついた。強子の顔は青ざめた。
『それも、聞いて喜べマスメディア!かの平和の象徴――オールマイトの強い推薦があって入学できた“超・特例”だ!その実力はオールマイトのお墨付きかァ!!?』
観客席(主にマスコミ用のスペース)がざわめきだす。
強子はというと、血の気の引いた顔で固まっている。
「(ちょ・・・どうすんだよコレ!!)」
全国に、強子が補欠であることが知れわたってしまった。
もう恥ずかしくて家の近所を出歩けない。地元では、みんなの憧れ強子さんで通っているのに。地元では負け知らずの強子さんで通っていたのに。
深くため息を吐くと、強子は観客席に背を向け、縮こまるような体勢で心操に声をかけた。
「・・・心操くん、わかってないようだから言うけど、私が君と組んだのは・・・君の個性にだけ頼って勝とうとしたからじゃない」
ぼそぼそと覇気のない声のわりに、心操を見る目は力強い。
思わず気圧されそうになりながら、心操は強子の言葉の続きを待った。
「フィジカルで強い私と、メンタルを支配できる心操くんが組めば、最強だと思ったの。私たち二人のチームアップなら、騎馬戦で一位をとれると思ったから組んだんだよ」
「!」
驚いたように目を見開く心操は、どうやら本当に思いつきもしなかったらしい。
先ほど強子が瀬呂のテープを防いだように――心操ひとりで対処できないところは強子がフォローする。
強子のパワーでもくずせない相手なら――心操の個性で相手を支配する。
互いの弱点を補い、互いの強みを活かす。そのためのチームアップだ。
心操ひとりでも、強子ひとりでも成し遂げられないことを・・・二人で組めば出来たはずなんだ。
「まあ、でも・・・今回の騎馬戦は、心操くん個人の力で勝ち残ったわけだから“ありがとう”と言っておくね」
「・・・そんな嫌そうな顔で礼を言われたのは初めてだが、“どういたしまして”と返しとく」
最後までつれない生意気な態度の心操に、強子の表情がふっと緩む。
この意固地で頑固な男のせいで、強子は全国に醜態をさらす羽目になったわけだが・・・思い返すと、これはこれで楽しかった気もする。結局、無事にトーナメントに進めたわけだし。強子の人選は間違ってなかったわけだ。
「次にチームアップするときは、ちゃんと協力体制で臨んでよね」
「次ったって・・・」
心操が不思議そうに眉を寄せた。
本日の体育祭はトーナメント戦を残すのみで、チームアップする機会などない。となると来年の体育祭のことだろうと考える。しかし彼女は、
「ヒーロー基礎学とかかな?」
「は、」
「だって、心操くんも来るんでしょ?ヒーロー科!」
楽しそうに歯を見せて笑う彼女に、心操はきゅっと口を結んだ。
彼女が笑顔で示した明るい道に、心操の胸がじんわりと温かくなっていく。
「待ってるよ」
そう言って、心操の目の前に、握手を求めるようにすっと手を差し出す。
彼はその手をじっと見つめたあと、まだ迷いのあるような動きで、強子の手を掴もうと腕をあげる。そんな焦れったい彼の手を、強子は自ら迎えにいきガシリと掴んだ。
腕を上下にぶんぶんと振られながら、心操の口元には、人知れず笑みが浮かんでいた。
「あ、でも、トーナメントで当たったら容赦なくつぶすけどね!」
「・・・」
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夢主に普通科のお友達ができました!ヤッタネ!
ちなみに夢主が修造みたいな熱い炎タイプなのは、きっと爆豪あたりの影響。
そして青山には予選でフェードアウトしてもらいました。ごめんなさい。
心操は最後の方まで0ポイントだったようなので、終盤までは秘策として個性を使わないでおいたんだろうなと推測しました。でも全部ただの妄想です。
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