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「真宙ってお母さんいないんだろ?」


そんな些細な一言が、仲間に入れなくなる小さな世界だった。
由緒正しい成金息子達が通う小学校は、荒々しいいじめはなくてもやはり幼さで人と違うものを遠ざけてしまう。
善悪の定義が曖昧な、だれかの言葉で、真宙は随分と前からともだちと呼べる存在はいなかった。

帰り道、親が迎えにくる生徒を視界の端にいれて小さな歩幅で学校をでる。
おかえり。そんな言葉で生徒を車に迎え入れる女の人をみると、お母さんのことを思い出していたのはもうずっと前のことで、今では何も思わなくなっていた。思わなくなったのか、蓋が出来たのか、それは分からないけど。


「真宙くーん!気をつけてねー」


見送りの先生が大声を張ってそう言うのに、真宙は口が開かなくてペコリと頭だけ下げた。






「おかえりなさい」



いつもの通り道のカフェの前、その人は居た。

期待していた声に構っていたアイフォンをしまって、そちらに駆け寄ると笑顔で視線を合わせるようにしゃがんでくれる。


「こら今アイフォン構いながら歩いてたな」


ばれたか、と思いながら顔をしかめる。


「……ごめんなさい」

「許しませーん」


ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜられて、ちょっと後ずさりする真宙はふわり支えるよう背中に置かれた左手に安心した。
彼はいつでも真宙を壊れ物のように優しく扱ってくれる。こうして注意するときでも、だ。それが酷く母親と被るけれど彼は母親と違って「真宙」とは呼ばない。敬語をちょいちょい入れてきて、家族のようではないんだと思い知る。


「西野さん?」

「ん」

「ただいま、です」

「あはは!おかえり、です」


あたたかい。彼に支えられて手の置き場に困り、そっと触れた肩も、支えられてる背中も。白い息を吐き出すほど寒い空気が笑顔で温まる。

ずっと一緒に居られる方法があるとするなら、教えてほしい。


「ぼくが、ゲームしなくなっても」


一位でみんなに凄いと言われなくなっても


「西野さんは嫌いになりませんか?」


母親のように、離れていきませんか。

溢れる言葉の一部しか口には出さなかったけど、西野さんは真宙を抱き上げて頬をさらりと撫でた。


「真宙さんとおれは、ゲームより先に出会ったんだよ」


そっか。すとん、自分の中に落ちた言葉に安心すると同時に、じゃあ何の繋がりがあるんだろう。と自分のアイデンティティに疑問が湧く。
なぜ優しくされているのか、そんな難しいことを考えるにはまだすこし人生経験が浅くて。

ただこの日々に、また終わりが来ることを恐れながら過ごしていくのだろう。





(捨てないで)(そばにいて)
(今は届かない人への言葉を被せる)



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