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ほんとは気付いている、かもしれない。

飛行機の待ち時間にパソコンを眺めながら、みているグラフとは全く違うことを考えていた。
でも考えれば考えるほどじぶんの中にいる人物のモヤが晴れてしまうから怖くなって、ふるっと頭を左右に振るう。


「ゆゆちゃん…」


恋しくて堪らない存在の名前を口にする。

かえってくる言葉の一つ一つが好き過ぎるその人の顔を、おれは知らない。
そーちんもとみりも天も知っているその人物。
知ってて受け入れられて、好かれるその人はきっとゲーム上のキャラと現実の差がほとんど無いんだろう。
笑顔が柔らかくてどこか一線ひいた話し方で、優しくて少し意地悪してくる。でもそれが嫌じゃない、むしろ心を許されてるんじゃないかなんて錯覚してしまうような、そんな存在で。

「わたる」そう呼ぶ声が、一定の人物を思い出させる。けど違うに決まってる。


「どうしよう……」


おれは、自分の性格をよくわかっていた。

わがままで気持ちが態度に現れやすくて癇癪持ちなんて言われてて、間違っても理性的ではない。
じぶんから追いかけるほど好きな人がリアルになんて現れたら、どちらかが壊れてしまうんじゃないかと、不安に思う。
今現在、ただでさえゆゆちゃんに冷たくされただけで浮き沈みが激しいし、すぐ怒るし。でもこれはゲームの中だから相手に害が無くて、おれだって数日置けば熱は冷める。ゆゆちゃんはそんなおれを何度だっておかえりと迎えてくれた……ゲームの中だからの話だ。

あの人は、リアルのゆゆちゃんは、おれが束縛していい人じゃない。

だから、ゆゆちゃんを探したい気持ちは無くさないといけないのに。


『結局ゆゆちゃんて、男?女?』


めずらしいと言われたあの質問に、すかさず答えたくないなら答えなくて大丈夫だと言った。

諦めの悪いじぶんにどれほど嫌気がさすか。

そもそも自慢してくる馬鹿2人のせいだ。
とみりや助がゆゆちゃんに会ったと、ずいぶん煽るようにその人の言葉仕草を喋るから。今思えば天のあの分かりやすい態度も、そうなんじゃないかなんて。極め付けに谷やんにヒントをやると言われた時も……。

視界にちらつく横髪をぐしゃり かきあげて、ノートパソコンを閉じる。
これ以上思考を巡らせたら答えなんて軽く出せてしまいそうで、砂糖も何もいれないコーヒーをぐいっと飲み干す。あのカフェで飲んだ珈琲と違って気分が落ち着くというよりは、ただすっきりクリアにしてくれた。

またあのカフェに珈琲を淹れてもらいに行こうとするこの足は、きっと店の前で足踏みする。




靄がかかったまま笑う、ぼくの最愛。



(できることなら逃げ切って)



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