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人前で寝るのは愚行だとおもう。

あいてに何されるかわからないし、なんか自分の知らないところで身の回りを構われるのも得意じゃない。ただのお節介なのか、もしくはできるアピールで服畳んでくれるのも、私物触られるのも、寝てる間に何かが変わることがすごく不安。

でも、人が近くにないと夜は怖い。

こんなんだから、夜は働きに出るのに好都合だった。
ネオン街は日が昇るまで華やかで賑やかで、夜だなんてこと忘れられるから。だいたい周りも似たようなやつが寄ってくるもので、なにも不自由なく楽しく過ごしていた、……はずだったのに。


「やっぱり変わり種の女の子をこっちの世界に連れ込むもんじゃないなぁ」


ゲームで大金叩いて楽しむより、おれたちの店の方が楽しませてあげれるよ。
なんて、オフ会でそんな軽い口説き文句を言ったばかりにどっぷりと沼にハマってしまったランカー女子は、俺を永久指名してくれた。それは全然良かった。ただ、相手が夜の街に詳しくもないことを完全に忘れてしまっていた。本気と遊びの際目を、相手はすこし間違ってしまっていたらしい。
よく自分だけじゃないのかとヒステリックを起こすわ、店を出禁になると俺の家を特定するわ、店の前や付近の俺の行きそうな場所にはかならず彼女の姿があるわ。

あ、やべーやつだ。
なんてホストあるあるに苦笑していたが、オーナーにはこっ酷く 下手くそ!と罵られて休暇を言い渡された。


「わたるとお揃いのニートになっちゃったなあ」


なんて、軽く冗談言えてたのも数週間で
女の子の家に上り込むたび対価を求められるのも疲れてきた。

男友達はみんな夜は仕事だし、1人で自分の家に居られないのはこんなにも体力を消耗するんだと目頭を押さえる。

そんな時に出会ったのが、ゆゆだ。


「やさかって読むんだよ」


西野弥栄、そう書いてにしのやさか。

あまり書き込まれていない、刻まれた干支が古い手帳の裏に書いてあったゆゆの名前。なんかやさかって名字みたいだなと、ただそう思った。




「またそんなに買ってきて」


弥栄の言葉は、否定的だけど家にあげることを嫌がらない。
それを良いことについ入り浸ってしまうわけだが、なにもしなくていいのがこんなに楽だと分かると仕方がないんじゃないか。対価を求められるでもなく、向こうはゲームしてるから話題を無理に振らなきゃいけないわけでもなく、周りの世話もしない。俺がしてといえば半々で嫌々してくれることもあるけど、自分から手を出してくるなんてほとんどなかった。


「やえ、ねえ」

「ん?」


おれの買ってきた酎ハイをちびちび飲みながら、テレビからこっちに視線を移す。
いまなら、ありすや助がゆゆに構いたがる理由がわかるかもしれない。


「今度はピザとか、デリバリーしようよ」

「いいね楽しそう」





(つかの間の休息)



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