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口出会い








はじめの印象は、なんて喋らないやつなんだと思った。

あるていどの事務的な挨拶に必要最低限な会話、聞いたことには笑って返事をくれるけど、仲良くなろうなんて気配は微塵も感じられなかった。

まさに仕事しにきてます、って感じ。



「店長!新社員喋んない奴だね〜」

「ああ、おれの甥っ子な」

「甥っこ何歳よ」

「さあ……今年21か22くらいじゃないか」


わっか。思わずじぶんの年齢と比較して、10個も下なのかと苦笑いする。

おっさんは今の若い子となに話していいかわからないよ。どこ住んでるの?前の会社でなにしてたの?そんなありきたりな質問はもう出し尽くして、とりつく島もなくなった。


「おはようございます、」


今日も今日とて、すこし気だるげに出勤してきた西野くん。

おれはお昼のまかないを食べながら、店長に続いておはようございまーすと返す。こちらをちらっと見たのでちいさく頭を下げると、むこうもちいさく頭を下げた。

更衣室で着替えを済ませると、すぐに開店準備に取り掛かる。
もうすでに話す雰囲気でもなくて、メモをみながら淡々と業務を進めていく西野をみていたら店長に「見過ぎだ」と注意された。だって、なんか話しかけるタイミングないかなと思って。


「あの、予備のタオルとかどこにあるんですか」

「あー…あそこの棚の一番上の段にあるよ。わかる?」

「わかると思います、ありがとうございます」


まかないのあんかけ炒飯食べていたら西野が質問してきたので、出してあげようかなーと思ったら説明しただけでわかると言われてしまった。しばらくすると、遠くから「ありましたー」と声がしてこっちも適当に返事をする。

きらわれては無いと思うんだけど。


なかなか、掴めない。






(雪のように溶けて馴染む)
(冷たいと思っていたそれは、ただ自然で)



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