RPGおまけ | ナノ
×
「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -







ポッキーの日だよ!

そう、コンビニの色とりどりのポップに大きく書かれていて、お菓子の棚を通った足が止まった。
販売戦略とはよくいうけど特別な日だと知ったからには買うしかないかなあ、人差し指と親指をあごに当てながらいろいろあるパッケージを眺める。赤、白、緑。とくに味を確認せずにインスピレーションだけで買うものを選ぶ。

他に買いたかったものも手に取り、レジでお会計を終わらせた。





「西野さん!おはようごさいます」


なにがそんなにお前を眩しくしてるんだってくらい後光のさした笑顔で、爽やかバイトが出勤してきた。メニューボードを書き終えていたおれは一緒に中に入りながら、マフラーを外す。

「西野さん、はいこれ」

あげます。と差し出されたのはおれが今日買った赤いパッケージで、えっと驚く。


「なんで…?」

「ポッキーの日とか、巷では言われてるんですよ」

「知ってるけど」


なんで、ポッキー箱ごとくれるの。ポッキーの日ってそういう感じ?バレンタインみたいな?え、俺の思ってたのと違うなあ。そう思いながら受け取って、爽やかバイトに左手で待てをする。待てをされたそいつは、首を傾げながらコート脱いで制服に着替えつつも、のんびり俺を待っててくれる。


「はい」


じぶんのロッカーにしゃがんだまま、立っている爽やかバイトに全く同じ赤いパッケージを掲げる。
驚いた顔して固まる爽やかバイトがなかなか受け取らないから、もう一押しあげる、と手に持つそれを揺らした。


「に、西野さんが買ったの…?」

「そう、出勤前コンビニいったらポップでポッキーの日ゴリ押ししててさ」

「そういうので買う人なの、意外」

「意外ってなんだよ」


くすくす笑っていると、赤いパッケージで口元を隠した爽やかバイトも目元が笑っている。
それ、と急に指差されて「どれ?」と視線を彷徨わせるけど、あるのは爽やかバイトからもらった赤いパッケージくらいで、これ?なんて手に持ってみせた。

「それ、開けてみて」

え、いま。まあいいかと思いつつ新品な箱を正規の開け方で、パリパリと紙を切り離してあける。カコッと乾いた音がして紙が切り離されて、開いた中身は何度も見たことある何の変哲も無いポッキーの袋が2つ。
「なにもないじゃん」なんかポッキーの日仕立てになってて面白いのかと思ったのに。

そういって逆さにしたら、ポッキーの袋がふたつと紙切れが一枚。
ぱさりとしゃがんでる膝に落ちた。

なんだこれ、これがポッキーの日仕立ての何かかな?と開いて見て驚いた。


「え!和也の字だよなこれ」

「そーです」

「この箱新品だったんだけど!え、どこかから入れれるの?」


箱を回してみるけど、こんな手紙入れれるような隙間なんてなくてえーえーと感動していると、近くに来て同じ目線までしゃがんで眉をハの字に下げて笑われる。貸して、と赤いパッケージを取り上げた爽やかバイトは、箱のてっぺんを器用に剥がして開けてみせる。100人に1人くらいはそこから開けそうだけど、なかなかそんなところ開けるやつはみない。その100人のうちのひとりがこいつか。レアものを見る目でみていたらポッキーの箱で額をど突かれた。


「ここのてっぺん開けて、その手紙入れて、またスティック糊とかで閉めたら完成するんだって」

「あ〜なるほど」

「クラスの女子が教えてくれた」


さりげなく女子と交流ある自慢された気がする。

にしてもスティック糊とか、文房具が必須な学生にしか思いつかない案なんじゃないか。すごいなぁと思いながら箱をカパカパ開き閉じしているおれは、おれのあげた箱を思い出して口をひらく。


「おれのあげた箱にも、実は入ってたりして」

「え」

「嘘だよ」

「……仕事しよ」


そういっておれを置いてタイムカードを押しに行った爽やかバイトを確認して、スティック糊を探した。




(糊はみつからなかった)
(仕方ないから箱に直接落書きしてあげた)



main