小説 のコピー | ナノ
口ある日
「あんなところに真崎が」
「え、どこどこ」
フリスビー投げた時のペットのようにすぐ反応する蜂谷幸俊に、嘘だと告げる。
なぁんだと軽く言うけど、内心高揚からの落差が激しいのか明らかに気落ちしているのがわかった。
なぜこんなことをしてるかと言えば、先日不思議なものをみたからだ。
まっきー。そうあだ名で呼ぶあいつが雄大と呼んで真崎をからかっていた。
嫌がるようすはカケラも無かったが、真崎は蜂谷の扱いに慣れているのかはいはいと蜂谷幸俊の下の名前を呼び返す。ゆきとし、そう呼ばれた瞬間の仮面が剥がれ落ちたような素の表情はめったに見れるもんじゃない。次の瞬間には真崎に抱きついて再度確認することはできなかったが、幸俊がこんなに懐くなんて姫児以来じゃないか?
人前で気を張るこいつを見抜いた姫児に、猫被らないのはわかるが。真崎には何故。
「軽々しくマッキーを引き出しにつかわないでよね〜」
「お前、真崎が好きなのか?」
毎日違う腕時計をいじっていた幸俊は、そういう俺をじとりと睨む。
「そーゆー簡単な言葉で片付けないで」
それは好意と取られたことが嫌なのか、それとも。
これ以上聞くと機嫌を損ねるのがなんとなくわかって、なにも聞かないでいた。
「一家に一台マッキーがいればいいのに」
この会話の最後に発されたことばに、電化製品を連想したのは俺の脳みそだからだろうか。
(マッキーいまならお買い得だよ)
(なんて)
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