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口裏庭での出来事






泣いてるのかと思った。


木陰。おれの定位置に誰かが座っていて、ふと顔を上げたそいつにああ真崎かと。ろくに話したこともないが、よく話題に出ていたので存在はよく知っていた。


普通で、なにも特記することがない。

そんな褒めも貶しも含んだ言葉で表現されていたそいつが、目の前にいる。
たまに遠くから姿を見かけると、あれが真崎かとチェックを入れるくらいには気になる存在。前に話そうと思って部屋に行ったとき、大勢で行ったのが悪かったのか恐縮していて。牛尾に罵倒されては酷い顔をしていた。
ああ、今日は話せる様子じゃないなと声をかけるのをやめて部屋を去ったんだったな。


きょうもまた、酷い顔。


そう思っていたけど今日はひとりだし、話しかけてみると最初は戸惑ってたくせに、普通に返すし。普通に猫の話にころころ笑う。切り替えがはやいというか、本来こういう明るい性格なんだろうか。


周りがこいつの表情を一喜一憂させるのなら、もっといい奴を選べばいいのに。



(はやく誰かに懐けばいい)
(なんだったら、俺でもいいけど)



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