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口君を知る。





「お前も飴いる?」

真崎に声をかけられて、ぼんやり見ていた俺はそのまま何と無く「うん」と受けとる。
レモン味の飴はあまり自分で買わないから新鮮だ。うるさい犬飼を注意しようとして振り向いたら目が合っただけ。それだけで飴を貰った。

これが真崎とのファーストコンタクトだ。


「鳳って授業中ずっと背筋ピンとしてる」


真崎が手にしているペンで背中のど真ん中をつつく。
ついさっき授業中に貸した赤ペンを返す際の、なんでもない絡み方がBLっぽいなと煩悩を抱きつつ赤ペンを受け取る。
まあおれが攻めか受けになるとは思ってないから、いくらBLっぽい絡みをしたところで意味は無いんだけど。これを真崎が他の人にしてるのを観たかったな。

これは俺が真崎を観察し始めたきっかけ。


「これ、食べるか?」

いつかのレモン味の飴のお返しにと買っていたキャラメルをひとつあげる。

真崎は目を輝かせて嬉しそうにはにかんだ。笑顔が思ったより飾り気のない、素直さがでていて、この人結構好きかもしれない。そう思った。




「真崎、俺…おれ、腐男子なんだ」



これは俺にとって誰にも言えない秘密。

親衛隊でも隊長の三玉しか知らない、誰も知らない、知られたくない秘密。打ち明けた時は心臓がいやというほど大きく脈打ってうるさかった。

もともと伊神や犬飼が居なくて一人で食べるのが寂しくて話しかけてきた真崎が、俺といつまでも仲良くするわけない。じぶんでもそう割り切って接しているつもりで、いつ離れても構わない。
だから俺の好きなように行動して、それに真崎がついてくるなら来ればいいし、来ないならそれで良い。

そう思っていたはずが、いつから変わったんだろう。


「落ち込むなよ。話したのは鳳だろ?鳳が俺なら引かれても構わないと思ったんじゃねえの?」


違う。引かれても構わない、なんて。


「お前、なら……いやっなんでもない」


言えなかった。お前なら引いても俺のそばにいてくれるんじゃないか、なんて。

犬飼達のところに戻るまででもいい、真崎と仲良くしてみたかったのに。
なんで今打ち明けてしまったんだ、別に今じゃなくたって、なんなら自分から打ち明けなくったって彼の性格上じぶんからは踏み込んでこなかっただろうに。

しばらく無言になってしまった空気に、気まずさ感じていたのはお互い。かと思っていたのだが。


「鳳、早く朝ごはん決めろよ。一緒に食おうぜー」


そんな一言に顔をあげる。

驚いたおれに、気にしてなさそうな顔で首をかしげる真崎。
一世に一代の告白をそんなに軽く流すなんて、って思いとやっぱり真崎は引いても一緒にいてくれる。そんな思いが同時にぶつかって、嬉しさの方が勝ってしまった。

自然とほころぶ顔が抑えられなくて、久しぶりに誰かに心から笑えた気がする。



(つられたように君も笑う)
(なにも変わらない真っ直ぐな笑顔)



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